「二人亀之助」(横溝正史)

白亀黒亀、本物はどっちだ!?

「二人亀之助」(横溝正史)
(「完本 人形佐七捕物帳二」)
 春陽堂書店

武蔵屋の娘・お鶴につきまとう
二人の若者。
二人は行方不明となってから
十七年ぶりに名乗り出てきた
亀之助であり、
人々は「黒亀」「白亀」と呼び分け、
好奇の目で見ていた。
事件の匂いを感じた佐七は、
辰・豆六・お粂に
調査を指示する…。

横溝正史
人形佐七捕物帳第三十話です。
十七年ぶりに現れた許婚者・亀之助は
なんと二人。
若い娘に婿二人。
色の浅黒い太っちょの「黒亀」、
色白のなぜ肩やさ男の「白亀」、
どちらが本物で、どちらが偽物か?
佐七がその謎に挑みます。

【捕物帳〇三〇「二人亀之助」】
〔主要登場人物〕
武蔵屋久造
…故人。小間物問屋武蔵屋の主人。
お鶴
…武蔵屋の娘。器量よし。
 二人の亀之助につきまとわれる。
お豊
…武蔵屋の後家。誠実な性格。
兵助
…武蔵屋の手代。
 顔反面に火傷の跡がある。
桔梗屋利兵衛
…故人。かつての小間物問屋の主人。
 息子・亀之助が行方不明となり、
 店を仲のよかった武蔵屋に譲って
 隠居した。
亀之助
…桔梗屋の息子として生まれたが、
 三歳のとき、鷲にさらわれて
 行方不明となる。
お霜
…かつて桔梗屋の乳母だった女。
亀之助(黒亀)
…猟師・金蔵の息子・倉作として
 育てられた。
 亀之助であると名乗り出る。
鎌五郎
…茶屋を営む老人。倉作が鷲に
 さらわれたいきさつを証言する。
亀之助(白亀)
…漁師・鰡八の息子・与七として
 育てられた。
 亀之助であると名乗り出る。
お網
…鰡八の隣家の女房。兵助と与七が
 幼なじみであることを証言する。
厳山
…桔梗屋の菩提寺・妙心寺の住職。
直助
…妙心寺の寺男。墓参りに来た
 お霜を殺害しようとする。
お粂…佐七の女房。
豆六…佐七の乾分。
佐七…人形佐七と呼ばれる御用聞き。
〔事件の概要〕
・鷲にさらわれ行方不明となった
 亀之助が二人現れる。
・病床の佐七、
 辰・豆六・お粂に調査を指示。
・お霜、直助から襲撃される。
 佐七がお霜を保護。
・二人の亀之助が、
 何者かに左腕を斬り落とされる。
・佐七、武蔵屋に乗り込み、
 真相究明、事件解決。

本作品の味わいどころ①
白亀黒亀、本物はどっちだ!?

白亀も黒亀も、亀之助であるという証、
つまり利兵衛の筆跡の入ったお守り札と
失踪時の着衣である
団蔵熨斗目の紋付きを、
それぞれ持参してきたから
話がややこしくなっているのです。
お守り札も紋付きもどちらも本物。
その事情を佐七が解きほぐすのです。

本作品の味わいどころ②
佐七一家、今回は組織的捜査

病床に伏せっている佐七は、
今回は「安楽椅子探偵」に徹しています。
そのかわり乾分の辰と豆六だけでなく、
女房・お粂も動員して
組織的捜査を敢行するのです。
辰は黒亀、つまり
倉作の身元を調査するために八王子へ、
豆六は白亀、つまり
与七の身辺調査のために木更津へ、
さらにお粂は「お守り札と紋付き」の
もう一つの出所の可能性として
桔梗屋の菩提寺である
妙心寺へ向かうのです。
それぞれが見つけた「証拠」を総合し、
佐七は明快な推論を組み立てるのです。

それにしても、
佐七一家が調査を開始した時点では、
まだ「事件」は起きていないのです。
それにもかかわらず
大がかりな捜査を開始したのは
「面白そうだから」。つまり
佐七の好奇心ゆえのことなのです。
しかしそのおかげでお霜の殺害は
食い止められたのですから、
事件に対する佐七の嗅覚は
鋭いとしかいいようがありません。

本作品の味わいどころ③
鶴亀祝言、めでたしめでたし

もちろん、捕物帳です。
筋書きの最後は「めでたしめでたし」で
締めくくられます。
お鶴と「本物の」亀之助が祝言を挙げ、
一件落着となるのです。
白黒どちらが本物か?
ぜひ読んで
確かめていただきたいと思います。

漫才コンビのような白亀・黒亀が
何やらユーモラスな雰囲気を
かき立てるとともに、
殺人事件は起きておらず、
終始軽いノリで進んでいきます。
その一方で、亀之助行方不明の
過去の真相は重厚であり、
その落差が激しい作品ともいえます。
それもまた捕物帳の
味わいの一つでしょう。
ぜひご賞味ください。

(2018.1.22)

〔「完本 人形佐七捕物帳二」〕
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