がんばれニッポン!
「夏から夏へ」
(佐藤多佳子)集英社文庫
※本記事は2016年7月に
Yahoo!ブログへ投稿したものを
一部修正したものです。
ずっと前から読みたかったのです。
オリンピック前に。
いえいえ、リオではなく。
そう、8年前の
北京オリンピック前に。
本書は2007年の
世界陸上大阪大会を走った
男子4×100mリレーメンバーの、
北京五輪を目指すまでを取材した
ノンフィクションだからです。
ハードカバーを買いそびれ、
文庫本もスルーしてたら売り切れ、
先日古書店108円コーナーで見つけ、
まあ、同じオリンピックなんだし、
と思って買った次第です。
鮮度がかなり落ちているのですが、
それでも読んでみると
面白さ抜群です。
「私は、高校陸上のスプリンター達を
モチーフにした小説を書くために、
陸上部の練習や試合を
4年にわたって見るという経験をして、
この世界の魅力にとりつかれた。」と
著者が語るように、
4×100mへの熱い思い入れが
よく伝わってきます。
その小説はもちろん
「一瞬の風になれ」で、
発表が2006年。
著者はそのまま陸上に
はまってしまったのでしょう。
一気にトップ・アスリートへ取材を敢行、
またしても素晴らしい作品を
完成させたのでした。
4×100mリレーは
わずか40秒足らずのレースです。
そこにこれだけ凝縮された
ドラマがひそんでいようとは、
思いもよりませんでした。
丹念で綿密な
取材の成果なのでしょう。
選手それぞれの過去の成長と挫折、
学生時代の逸話や恩師の談話、
お互いに感じている選手像、
試合に対する思い、
そうしたものを
実に見事に繋ぎ合わせ、
一つの立体的な物語として
紡ぎ上げています。
それにしても
アスリートの世界は厳しい。
練習一つとってもこうすればいい、
という絶対的なものが
存在するわけではないのです。
「素質というベースが必要なのは、
100mだと11秒前後ぐらいまでの話。
そこから先はそれぞれの努力が必要。
正解はないので、個々に
試行錯誤していくことになります。」
で、私のように
運動の苦手な人間は思うのです。
「やっぱり自分には無理」。
だから本書を読んで、
せめて良い観客に
なれるようにと思うわけです。
2008年北京では、
日本は本書に取り上げられた
塚原直貴・末續慎吾・
髙平慎士・朝原宣治の4人で、
史上初の銅メダルを獲得しました。
それから8年、メンバーは
世代交代しているのですが、
どのような活躍を
見せてくれるのでしょうか。
まもなく始まるリオが楽しみです。
(2016.7)
(追伸)
北京オリンピックの4×100mリレー
優勝のジャマイカの失格が確定し、
日本チームの繰り上げ銀メダルが
決まりました。
東京オリンピックが楽しみです。
(2019.8.2)