「海はゴミ箱じゃない!」(眞淳平)

中学生が環境問題を考える入門書として

「海はゴミ箱じゃない!」(眞淳平)
 岩波ジュニア新書

アメリカのコーヒーチェーン
「スターバックス」が、
使い捨てプラスチック製ストローの
使用を全店で
段階的に廃止と発表しました。
ストローが海に流れ出て、
マイクロプラスチック(1mm以下の
微小なプラスチック粒子)となり、
海洋生物等に
悪影響を及ぼしているからです。

実は、マイクロプラスチック以前の
問題として、海は大小さまざまな
「ゴミ」でいっぱいなのです。
本書はマイクロプラスチックの弊害が
認識される以前の
2008年に著されたものです。
本書が出版された段階で、国際的に
足並みを揃えた対応ができていれば、
問題はここまで深刻に
ならなかったのではないかと考えます。

第1章・第2章・第3章で、
筆者は沖縄西表島、北海道知床、
神奈川湘南海岸での
漂着ゴミについての状況を
詳らかにしています。
沖縄の美しい海であっても、
北海道の冷たい海であっても、
湘南の人気ビーチであっても、
ゴミはかつてないほど
漂着している現実がよく分かります。

第4章では、そうして海岸に流れ着く
漂流・漂着ゴミについて、
詳しいデータをもとに解説しています。
どういう種類のゴミが、
どういう地域から、
どのようにして漂着しているかが
よく分かります。

第5章では、日本国内において、
どのようにゴミが海まで辿り着くか、
東京荒川を探索して
リポートしています。
日本の、いや世界のどの川でも
このようなことが起こって
海が汚染されていくということが
よく分かります。

第6章では、そうした漂流・漂着ゴミが、
海洋生物たちに
どのような悪影響を及ぼしているかの
報告がなされています。
思いがけないものが、海の生物に
深刻な影響を与えている様子が、
豊富なデータをもとに
説明されています。

第7章では、
実際に日本国内から流れ出たゴミが、
瀬戸内海の海底に
大量に沈んでいることを、
実証しています。
一人一人が出したわずかなゴミが、
海に集積されていく様子が
しっかりとうかがえます。

そして第8章では、
新潟県佐渡市の中学生とともに、
その解決策を模索していきます。
漂流・漂着ゴミ問題は、簡単に
解決するようなものではありませんが、
しかし一人一人の取り組みこそが
着実に解決に向かうということを
思い知らされます。
中学生であっても、
できることがあるのです。
ましてや私たち大人のなすべきことは
豊富にあるに違いないと
確信させられます。

海洋ゴミ問題は、
マイクロプラスチックという
新たな局面を迎えています。
まずは私たち一人一人が、
その問題を真摯に受け止め、
自分のこととして
解決のためのアクションを起こすことが
大切なのでしょう。
中学生が環境問題を考える入門書として
お薦めします。

(2018.8.6)

Sergei TokmakovによるPixabayからの画像

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA