船は日本男児のロマンなのです
「海島冐檢奇譚 海底軍艦」(押川春浪)
(「少年小説大系第2巻押川春浪集」)
三一書房

「海島冐檢奇譚 海底軍艦」(押川春浪)
青空文庫

軍艦日の出!此名は確かに、
日出雄少年の名と
或關係を有つて居ると信じます。
然し、濱島氏は决して
虚名を貪る人でない、此名は
彼が求めた名では無いのです、
すべて本國政府の
任意に定めた事で、軍艦命名式の
嚴肅なる順序を經て…。
前回取り上げた
押川春浪の「海底軍艦」。
実は映画化されています。
1963年制作の東宝特撮映画です。
原作押川春浪となっていますが、
「少数の人員が孤島で
海底軍艦を建造する」という
大まかなストーリー以外は
すべて映画オリジナルであり、
小説とのつながりは全くありません。
おそらく、「海底軍艦」という
響きが強烈であり、そのイメージを
借用したものと考えられます。
映画「海底軍艦」は
年齢的に私よりも一つ上の世代に
ファンが多いのではないかと思われます。
私の世代はやはり
TVアニメ「宇宙戦艦ヤマト」です。
それにしても、日本人は
船が大好きな民族なのでしょうか。
船へのこだわりの強さが
それらの作品に見られます。
そもそも海中潜航する乗り物は
当然潜水艦なのですが、
それをあえて「海底軍艦」としたのは、
船としての外観を
尊重したかったのでしょう。
大日本帝国の強力な
守護神となるべき軍事兵器は、
決して通常の潜水艦のような
葉巻型の外観ではいけなかったのです。
「宇宙戦艦ヤマト」もしかりです。
船としてのデザインは、
上下の観念のない宇宙空間で戦うには
圧倒的に不利であることは明白です。
でも、存亡の危機を
迎えた地球を救う宇宙船は、
スターウォーズの
ミレニアム・ファルコン号のような
円盤形ではいけなかったのです。
現実の歴史もまたそうでした。
太平洋戦争において、
海軍の誇る軍艦が次々と
戦闘機や潜水艦の餌食になろうとも、
最高技術を結集させて
建造する最終兵器は
大型戦艦大和以外には
ありえなかったのです。
明治の小説世界、戦前の現実世界、
そして戦後のSFアニメ。
船の存在感の大きさは100年もの間、
日本に続いているのです。
四方を海に囲まれた日本にとって、
異国への冒険、そして進出は
船以外には
考えられないのかも知れません。
そうです、
船は日本男児のロマンなのです。
※特撮好きの私ですが、
この映画「海底軍艦」は
まだ観たことがありません。
たしか「ゴジラFINALWARS」にも
同じ海底軍艦・轟天号が
登場していたのですが、
海上航行・海中潜航はもちろんのこと、
空中飛行までできるという代物でした。
船体の船首部分に
なぜかドリルがついているものの、
地中を掘り進む場面は
登場しなかったと記憶しています。
〔青空文庫〕
「海島冐檢奇譚 海底軍艦」(押川春浪)
〔「少年小説大系第2巻押川春浪集」〕
海底軍艦
幽霊島
塔中の怪
空中大飛行艇
続空中大飛行艇
黄金の腕輪
人外魔境
幽霊小家
怪人鉄塔
樹上の侠士と美人
頑強壮漢
〔関連記事:押川春浪〕
(2018.10.13)

【今日のさらにお薦め3作品】
【こんな本はいかがですか】