人権感覚のレベルがちがいます
「平和ってなんだろう」
(足立力也)岩波ジュニア新書
「私は五年生のクラスで、
学級委員をやっていた少女に
「平和って何?」と質問してみた。
その答えを聞いて驚いた。
彼女は迷わず
「民主主義・人権・環境」と答えたのだ。」
本書の一節です。
昨日は民主主義について
取り上げましたが、
今日は人権について
考えたいと思います。
コスタリカは
人権先進国であることを
PRしているのだそうです。
著者は実際に取材し、
待遇のよい刑務所や
窓口負担無料の病院の制度を取り上げ、
人権意識の高さを紹介しています。
その中でも特に目を引くのが、
憲法小法廷の存在です。
家庭、民事、刑事の3つの法廷に加え、
直接的に違憲性を問う裁判を
可能にする法廷なのだそうです。
この制度について著者は、
イラク戦争における
米国支持を表明した大統領に対する
違憲裁判を取り上げ、
説明しています。
2003年、米国がイラクに対して
戦争を始めた際、
時のコスタリカ大統領は
米国に対して「モラルサポート」を
表明するのですが、
これに国民は猛反発、
各地で違憲裁判が起こされます。
提訴した一人に
法学部の大学生がいたのですが、
彼は弁護士を雇わず、
自らの手で訴状を書き、
裁判官に問いかけます。
七人の裁判官は全員一致で
大統領の行為の違法性を認め、
違憲判決が下されます。
一市民が当たり前のように
政治の違憲性を疑問視し、
当たり前のようにそれを提訴し、
当たり前のようにそれが認められる。
政権への批判的な見解を
述べた報道機関に、
すぐさま閣僚が圧力を
ちらつかせるようなどこかの国とは、
人権感覚のレベルがちがいます。
さて、コスタリカは
「軍隊をすてた国」として有名です。
この点にふれ、
「日本とは状況が違う」という
否定的な見方をされている方も
少なくありません。
確かにコスタリカのシステムを
そのまま日本に導入することには
無理があるでしょう。
しかし、コスタリカ国民の、
平和に対する高い意識、
平和の本質が
民主主義・人権・環境であることを
理解し、その実現に、
前向きに取り組んでいる姿勢は
見習う必要があると考えます。
私たちの国は、
緩やかな統制が始まりつつあるように
感じる昨今です。
教育現場にいると、
それがより一層感じられます。
私たちは本当に平和なのかどうか、
民主主義と人権の視点から
問い直す必要が
あるのではないでしょうか。
(2018.11.1)