「百万ポンド紙幣」(トウェイン)②

子どもたちと名作文学を結びつけてくれる素敵な一冊

「百万ポンド紙幣」(トウェイン/堀川志野舞訳)
 (絵:ヨシタケシンスケ)理論社

前回取り上げた
トウェインの「百万ポンド紙幣」。
その記事を投稿したその日に
勤務校の図書室の
新刊本コーナーで見つけた一冊です。
こんな本が出ていたのか!
トウェインなんて、
中古の文庫本を丹念に探すか、
世界文学全集の類いをあたるかしないと
もう読めないと思っていました。

この本の素晴らしいところ①
ヨシタケシンスケの素敵なイラスト

表紙が素敵です。
中学生はトウェインを
知らないでしょうから、
文学全集的な堅苦しい表紙では
見向きもされないでしょう。
ヨシタケシンスケの
軽妙なイラストの表紙であれば、
手に取ってみようかなと思うはずです。
それでいて、
イラストは表紙と中表紙と
各短編の扉だけにとどめてあります。
本文中には挿入されていないため、
読書のイマジネーションが
損なわれることもありません。

この本の素晴らしいところ②
手軽な大きさ大きな活字

本が大きくなく重くなく、
手軽です。
ここも大切なポイントです。
大きく重い本など、
中学生は手に取ろうとしません。
かといって文庫本は文字が小さく、
読みにくい。
大きい活字の方が
読んだときにすんなり
頭に入ってくるのです。
私のような老眼でなくても
活字は大きくあるべきです。

この本の素晴らしいところ③
短編集かつタイトルが魅力的

中学生の朝読書では、
長編小説の読破は
難しいものがあります。
短編集こそ朝読書向きです。
本当はトウェインの
「ハックルベリー・フィンの冒険」を
読ませたいのですが、
いきなりは無理でしょう。
まずは短編集からスタートです。
そしてもっとも魅力的な
短編の題名を
タイトルに据えている点、
編集者のセンスを感じます。

この本の素晴らしいところ④
現代的なセンスある訳文

海外の文学を味わう際に
ネックとなるのが
訳文の善し悪しです。
古い訳文は得てして
古風な言い回しが多く、
雰囲気を損なっていることが
多々あります。
この堀川志野舞訳は
現代的なセンスに溢れていて、
会話文の多いトウェインの文章に
マッチしています。
そのためテンポ良く
読み進めることができます。

本書のような素敵な本が、
子どもたちと名作文学とを
結びつけてくれるのではないかと
思うのです。
何でもシリーズになっていて、
ほかにルブランやチェーホフ、
なんとロレンスや
ロンドンまでありました。
こうした本が
学校図書館(一般図書館も)向けに
どんどん出版されることを
期待しています。

(2018.11.12)

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