「瓶詰地獄」(夢野久作)①

兄妹はなぜ死を選ばなくてはならなかったか

「瓶詰地獄」(夢野久作)
(「日本文学100年の名作 第2巻」)

 新潮文庫

「日本文学100年の名作 第2巻」新潮文庫

「瓶詰の地獄」(夢野久作)
(「瓶詰の地獄」)角川文庫

「瓶詰の地獄」角川文庫

無人島から漂着した
三本の麦酒瓶。
それらには海難事故に遭い、
漂着した兄妹からの
手紙が封入されていた。
その一通目には、
呪われるべき
自分たちの罪と運命、
愛おしい両親への謝罪、
そして「死」の選択が
切々と綴られていた…。

夢野久作という名前は
知っていましたが、
「ドグラ・マグラ」等、
文庫本の表紙の絵が
おどろおどろしかったので、
さけていました。
今回、日本文学100年の名作第2巻
収録されていたことから、
始めて作品を読みました。

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さて、残りの二通には
どんなことが書かれてあったのか?
二通目には、
無人島へ漂着して
10年目の生活について綴られています。
物質的には極楽でありながらも、
精神的には地獄である様子が
語られているのです。
そして三通目には、
たった二行だけ、
両親への救助の願いが
書かれています。

時系列で並べると、明らかに
三通目→二通目→一通目の順に
なるはずです。
兄妹がなぜ死を選ばなくては
ならなかったかを想像させるために、
このような順番で提示しているのです。

何度か読み返して思ったのですが、
この兄妹が
死を選ばなければならなかった理由は、
聖書を持って無人島に
漂着してしまったからなのでしょう。
聖書も漂流中に
失われてしまっていたなら、
自分たちがたどりついた行為が
「罪」であることを自覚することもなく、
楽しい生活を送り、
念願かない救助され、
めでたしめでたしで
終わったことでしょう。

本来、人を救うべき聖書が、
人に罪を自覚させ、
死に導かせる。
何とも皮肉なことです。
もっとも、この兄妹が
聖書をさらに深く読み込んでいれば、
自ら死を選ぶことが
最も重い罪であることに
知り得たのでしょうが。

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この作品について、
ネタバレを避けながら紹介するのは
すこぶる難しい作業です。
まずは読んでみて下さいと
言わなくてはならない作品です。

それにしても本作をはじめとする、
本アンソロジーに収録された
昭和初期の15編。
どれもこれも
強烈な個性を放っている
綺羅星の集合です。
それが第3巻以降は
きわめて現実的な素材を扱った作品に
集約されていきます。
まるで幻想的・耽美的・怪奇的作家が
ことごとく淘汰されたような
印象があります。
この時期の作品が正当に評価され、
継承されていたならば、
日本文学はもっと絢爛豪華なものに
なっていたのではないかと
推察されます。

最後に、…この作品は
子どもには薦められません。
念のため。

「日本文学100年の名作第2巻」
 収録作品一覧
1924|島守 中勘助
1925|利根の渡 岡本綺堂
1926|Kの昇天 梶井基次郎
1926|食堂 島崎藤村
1928|渦巻ける烏の群 黒島伝治
1928|幸福の持参者 加能作次郎
1928|瓶詰地獄 夢野久作
1930|遺産 水上瀧太郎
1930|機関車に巣喰う 龍胆寺雄
1931|風琴と魚の町 林芙美子
1932|地下室アントンの一夜 尾崎翠
1932|薔薇盗人 上林暁
1932|麦藁帽子 堀辰雄
1933|詩人 大佛次郎
1933|訓練されたる人情 広津和郎

※「瓶詰の地獄」収録作品一覧
瓶詰の地獄
人の顔
死後の恋
支那米の袋
鉄鎚
一足お先に
冗談に殺す

〔「瓶詰地獄」記事続編〕

(2018.12.1)

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【青空文庫】
「瓶詰地獄」(夢野久作)

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