「ご当地電力はじめました!」(高橋真樹)②

やはり原発は日本のシステムにとって歪な存在

「ご当地電力はじめました!」
 (高橋真樹)岩波ジュニア新書

前回、再生可能エネルギーが
小規模であることは
デメリットにはならないということと、
大規模発電こそ無駄が多く
リスクが潜んでいることについて
述べました。
それだけではありません。
本書には、まだまだ私たち日本人が
考えなければならない問題が
多数指摘されているのです。

問題の2つめは、
発送電分離を進めないかぎり、
再生可能エネルギーは
普及していかないということです。
多くの国で発電事業と送電事業が
分離・独立しているのですが、
日本の場合は
それらを大手電力会社が
一括して取り扱っているため、
再生可能エネルギーを生み出しても、
既存の送電線を利用するかぎり、
電力会社のかける託送料金がプラスされ、
安価にならないという
弊害があるのです。
つまり、
発送電が一体化されているかぎり、
電力は決して安くはならない
構造になっているということなのです。

日本の大手電力会社が
他の再生可能エネルギーによる
発電事業者に対して提示している
「託送料金」は、
欧米の平均的な価格の
約5倍もあるのだそうです。
そして、なぜそれだけかかるのか、
電力会社は一切
説明していないということも
本書にはしっかり指摘されています。
情報をクローズしている
電力会社の体質は悪質だと思います。

問題の3つめは、
電力自由化に伴って
大手電力会社が既得権益を
確保しようという動きが
出ていることです。
現在、原発で発電した電気に
一定の価格を決めて
電力会社の収入を保証する制度を
経済産業省が進めています。
原発はコストが安いというのは、
全くのでたらめであったことを、
電力会社も国も
認めているようなものです。
このままいくと、
電力自由化の中で、
原発を維持するために
国民の税金が使われることになるでしょう。
「本末転倒」とはまさに
このことを言うのではないでしょうか。

本書は再生可能エネルギーを
各地域の実情に応じて
適切に生産していくことで、
国内のエネルギー問題の解決と
地域の活性化の両面が
期待できることについて
言及した書でなのです。
原発についての否定的な意見は
多くは書かれていません。
にもかかわらず、
本書をじっくり読むと、
やはり原発は日本のシステムにとって
歪な存在であることが
浮き彫りになってくるのです。

本書にはこうも述べられています。
大切なのは私たちが
しっかりと注目することであると。
エネルギー問題に関心を持ち、
国の施策を注視し、
電力会社の利益追求に
鋭い監視の目を光らせることこそ
大切なのだと。

日本という国の将来のため、
そしてそれぞれが住む地域の将来のため、
さらには若い人たちが
この国にその地域に
安心して暮らしていくことが
出来るようにするため、
私たち一人一人がしっかりと、
エネルギー問題に関心を
持ち続けていかなくてはならないのです。

(2018.12.5)

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