「ごきげんな裏階段」(佐藤多佳子)②

お互いにわかり合えるという作者からのメッセージ

「ごきげんな裏階段」(佐藤多佳子)新潮文庫

「タマネギねこ」
学がアパートの裏階段で見つけた
茶トラの猫・ノラは、
タマネギが大好物。
学は妹のくるみと一緒に
毎日えさのタマネギをあげにいく。
ある日、なぜか裏階段に
タマネギがたくさん生えていて、
それを食べたノラは…。

「ラッキー・メロディ」
一樹は音楽の時間の
笛のテストに備えて練習をするが、
一向に上手くならない。
家族にうるさがられた一樹が
アパートの裏階段で練習していると、
「教えてやろうか」と
笛を背負ったクモが
話しかけてきた…。

「モクーのひっこし」
ナナが裏階段で遊んでいると、
パパが煙草を吸いにやってくる。
パパの吐いた煙は
なぜかダストシュートの
塞がれている口から吸われている。
不思議に思った二人が
蓋を開けると、
人の形をした煙が出てきて…。

お化けを素材とした三話オムニバス。
お化けといっても
妖怪や魑魅魍魎の類いではありません。
人間としっかりコミュニケーションを
とることができるのです。

タマネギねこは学とくるみだけでなく、
学のパパ・ママとも言葉を通わせます。
煙のモクーもナナだけでなく
パパ・ママ・そして
パパの行きつけのスナックの
マスターやそのお客さんたちとも
交流します。
笛吹きグモだけは
大人の前では本性を見せないのですが、
一樹のクラス全員と
音楽教師・アリババ先生に
素敵な(?)メロディを聴かせます。
本書の明るいお化けたちは、
子どもと心を通わせ、
そして大人とも意思疎通できるのです。

そんなお化けたちを仲立ちとして、
子どもと大人も素敵な交流をします。
学・くるみ兄妹とパパ・ママ、
そしてナナと両親はもちろん、
一樹はそれまで苦手だった
アリババ先生を
理解できるようになるのです。

そしてもちろん子どもどうしも
つながっていきます。
くるみとナナが
友達になる予感を示し、
物語はさわやかな余韻を残して
終わります。

通う学校が違っても、
生きてきた年月が違っても、
そして人間とおばけという
生物種(?)が違っても、
お互いにわかり合えるという
作者からのメッセージを感じます。
「甘口の児童文学」などと
侮ってはいけません。

いじめや児童虐待、
テロや民族紛争、
テレビをつけても人と人とが
わかり合えていない状況ばかりが
流れてきます。
そういう現代だからこそ、
子どもたちに明るく爽やかで、
そして夢のある物語を
読ませたいと思うのです。

(2018.12.11)

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