「十二歳」(椰月美智子)②

子どものために書かれた100%の児童文学

「十二歳」(椰月美智子)講談社文庫

子どもたちが読むべき本って、
どんな本だろう。
この十数年、
ずっと考えてきました。

幼児期に読ませたい本は
豊富にあります。
絵本です。
国内外に
素晴らしい内容の絵本が存在し、
しっかりと根を下ろしています。

小学生に読ませたい本も
それなりに充実していると思うのです。
新書本サイズの
「○○少年少女文庫」的なシリーズが
いくつも出版されています。
すべてが、
というわけではありませんが、
良書が数多く含まれています。

でも、中学生向けの本が
わかりにくいのです。
いわゆる「児童文学」なのですが、
ネット等の情報で探しても、
ライトノベルか売れ筋の小説しか
紹介されていないのです。

それなら自分で探そう。
そう思って探してみると、
純粋な児童文学の文庫本は
意外と少ないことに気づきました。
「大人が読む児童文学」
(メルヘン小説や
ノスタルジック小説)は
数多いのですが、
中学生のための純粋な「児童文学」が
見つかりにくいのです。
「大人が読む児童文学」の多くは、
冒頭か終末に
大人になった主人公が描かれ、
過去を振り返る場面がります。
この、「大人の目線」が
子どもたちには余計だと思うのです。

そうした中で、
本作品は子どものために書かれた
100%の児童文学といえる一冊です。
タイトルの通り、
十二歳である小学校6年生の1年間を
淡々と描いている作品です。

鈴木さえはどこにでもいる女の子。
勉強が特にできるわけではない。
運動はそれなりにできるけど、
ポートボールの最後の試合には
出られなかった。
そんな彼女は、ある日、
心と身体がかみあわない
「人間離れ」の感覚を感じる…。

この時期の子ども特有の、
ころころと変化する視点によって、
小学校6年生の目の高さで
ありふれた日常を
切り取った作品なのです。
劇的なドラマを
期待してはいけません。
瑞々しく描かれた、
多感な時期の十二歳の1年間を
味わうべき作品です。

中学校1年生が読んでも、
もしかしたら「面白い」と
感じないかもしれません。
なぜなら子どもたちは
非日常の世界と
強烈な個性をもった主人公が
好きなのですから。
でも、こういう作品から
文学へと近づいてほしいのです。
そうすれば文学の本当の「面白さ」、
つまり、
単なるエンターティメントではない、
教養としての面白さが
わかるはずなのですから。

(2018.12.13)

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