「雪の結晶ノート」(カッシーノ&ネルソン)

個人購入がためらわれるけれども手にとって読みたい本

「雪の結晶ノート」
 (カッシーノ&ネルソン/千葉茂樹訳)あすなろ書房

毎週金曜日、
勤務校の図書館から
本を借りてきて読んでいます。
そのうちの1冊。
雪の結晶ができるしくみや
いろいろな雪の結晶が、
イラストや写真によって
説明されている、
見るだけで楽しくなる1冊です。

「雪は天から送られた手紙である」
巻末に中谷宇吉郎の
名文句が載っています。
中谷宇吉郎の「雪」に進む前に
読むべき1冊と言えるでしょう。

わずか30ページ。
難しいことは書かれていません。
冒頭に「雪の結晶ができるしくみ」、
結末に「雪の結晶の観察の仕方」が
丹念に書かれていますが、
残りは雪の結晶の写真です。

それがまた美しい。
雪の結晶とは
このように美しいものだったのか。
中谷宇吉郎が夢中になった
「雪の結晶」の写真が
余すところなく収録されています。

雪の結晶は、
なかなか完全な形で
落ちてくることが少ない上、
写真を撮ろうとして採取すると、
すぐ融けてなくなります。
本書の写真を撮影したカッシーノさんは
おそらくかなりの
試行錯誤をしたはずです。

こういう本こそ、
図書館が揃えるべき本であり、
私たちが図書館で読むべき本です。
大型本とは言えないサイズで、
30ページで1200円。
値段は決して高くはないのですが、
余程の雪の結晶フェチでなければ、
なかなか個人で買おうとは
思わないのではないでしょうか。
おそらくは書店で遭遇する機会も
ほとんどないはずです。
こうした専門書、図鑑、
マニアックな本ほど、
図書館が揃えるべき本だと思うのです。

いつの頃からか、
図書館が無料貸本屋と
揶揄されて久しいのですが、
出版されたばかりの流行小説を揃えて
「利用者のニーズに応えた」などと
いっている図書館は、
私は好きになれません
(それも図書館の使命の
一つだとは思うのですが)。
それよりも、
個人で所有できない本を
いかにして揃えるかが
図書館の大切な使命だと思うのです。

学校図書館も同様です。
ラノベを本棚いっぱいに
揃えたとしても、
それが「学校」図書館として
あるべき姿なのか、疑問です。

全国の小中学校の学校図書館で、
ぜひ本書のような
「個人購入がためらわれるけれども
手にとって読みたい本」を
多数購入してほしいと切に願います。
それがひいては
「本好き」「読書好き」の子どもたちを
増やすきっかけになると信じます。

(2019.2.11)

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