「豆つぶほどの小さないぬ」(佐藤さとる)

やはり本作もきわめて上品な恋愛小説

「豆つぶほどの小さないぬ」(佐藤さとる)講談社文庫

風の子たちは
ある日「せいたか」から、
その昔コロボックルたちが
飼い慣らしていたという
マメイヌの存在について
尋ねられる。
風の子はかつて
大風に飛ばされた先の
見知らぬ竹林の中で、
マメイヌらしき生きものと
遭遇していた…。

前回、佐藤さとるの
「だれも知らない小さな国」について
取り上げました。
実はこの作品、
コロボックル物語シリーズとして
全6冊まで出版されているのです。
一作目はかなり以前に
初読していたのですが、
二作目以降は読んでいませんでした。

ああ、やっぱりあの二人は
結ばれていたのか。
前作では、主人公「せいたかさん」と
「おちび先生」の恋愛感情は
全く描かれていません。
にもかかわらず、作品は
超一級の恋愛小説だと感じました。
それは間違っていなかったのです。
本作は前作から数年後の物語であり、
二人は結ばれ、
子どもも授かっています。
当然、コロボックルたちにも
世代交代が見られます。
そして語り部は
人間である「せいたかさん」から、
コロボックルの「風の子」へと
移ります。
風の子たちは
コロボックル通信社として
新聞を発行することになります。
その第一号として
マメイヌの取材を始めるのです。

前作は人間の話し手が
伝説の存在コロボックルを
見つけ出そうとする。
本作ではコロボックルの語り手が
幻のマメイヌを探していく。
ここではもうコロボックルが
確かに存在しているかのような
錯覚を覚えます。
いい年をしたおじさんでさえも
意識しないうちに
ファンタジーの中へ入ってしまいます。
さすがは佐藤さとる作品です。

そしてここでも主人公・風の子と
コロボックルの少女・おチビが
とっても素敵な関係を
創り出しています。
おチビの落とした詩を
風の子が見つける。
風の子はそれを大事にしまい込む。
詩の内容におチビの
風の子に対する気持ちを
読者が気付くように
さりげなく暗示するとともに、
風の子の振る舞いにも
おチビへの気持ちを読者が
くみ取れるように仕掛けを施す。
あからさまな行為や会話を一切描かず、
それでいながら登場人物の気持ちを
100%読み手に伝えきる。
やはり本作もきわめて上品な
恋愛小説なのです。

「だれも知らない小さな国」を読んだら、
次は当然本作へ。
中学生の子どもたちに薦めたい一冊です。

(2019.3.8)

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