「原発事故を問う」(七沢潔)

チェルノブイリとフクシマの共通点

「原発事故を問う」(七沢潔)岩波新書

タイトルだけを見れば、
福島第一原発事故について
書かれた本だろうと
思うのではないでしょうか。
しかし本書の出版年は
福島第一原発事故の15年前の
1996年です。
本書は1986年に起きた
チェルノブイリ原発事故について
書かれた本なのです。

しかし、内容を読み始めると、
やはり福島第一原発事故について
書かれた本であるかと
錯覚してしまいます。
チェルノブイリとフクシマ。
両者とも世界最悪のレベル7の
原発事故であるため、
共通点が多いのです。

チェルノブイリとフクシマの共通点①
想定外の事故という認識

「チェルノブイリ原発事故以前、
 原子炉が暴走して炉や建物が
 完全に破壊されるような
 爆発事故は
 ありえないといわれた。」

フクシマの事故でも、
「想定外」という言葉が
繰り返されました。
「ありえない」はずだったと。
世界はチェルノブイリ以後、
原子炉が破壊される事故は
「あり得る」と
認識していたにもかかわらず、
日本は「ありえない」と
言い続けてきたのです。

チェルノブイリとフクシマの共通点②
通報の遅れと意図的情報操作

チェルノブイリ事故では、
旧ソ連政府機関がパニックを恐れ、
放射能漏れの情報を意図的に遮断し、
住民に一定期間隠蔽していました。
フクシマでも
緊急時迅速放射能影響予測
ネットワークシステムSPEEDIの
情報が公開されず、
近隣の住民の避難が遅れる
結果となっています。

なぜフクシマの事故は
四半世紀も前の
チェルノブイリの事故を
なぞるかのように起きたのか?
それは本書第3章
「世界は事故をどう受け止めたか」を
読めば納得できます。
(事故が)ヨーロッパの国々で
 大きな衝撃を持って受とめられ、
 原子力をめぐる論議が沸騰し、
 国によっては原子力計画や
 政策を変更したというのに、
 東に八千キロ離れた日本では、
 原子力政策においても
 計画についても、
 ほとんどなんの影響も
 もたらされなかったからだ。」

日本がこのとき、
チェルノブイリ事故は
ソ連の特殊事情であり、
「我が国ではこのような大事故は
決して起こりえない」という
見解を打ち出し、
原発の大増設を推し進めたのは
周知の通りです。

そしてそれも当然のことと
思えてくる昨今です。
八千キロ離れた彼の地だけでなく、
己の国で同様の事故が起きてなお、
原発を推進する
愚かな指導者を
戴いた国なのですから。

(2019.3.15)

Image by Amort1939 on Pixabay

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA