「話す」という日本語についての新しい視点
「劇団四季メソッド 美しい日本語の話し方」
(浅利慶太)文春新書

私は演劇が好きで、
中でも劇団四季の舞台は大好きです。
わかりやすいからです。
実演は数えるくらいしか
接していませんが、
NHK-BSで放送したものを
せっせと録画して
繰り返し見ています。
なぜ劇団四季の演劇は
「わかりやすい」のか?
美しい日本語を
話しているからなのです。
劇団四季創設者である著者は、
美しい日本語を「話すこと」を
何よりも大切にしています。
本書は劇団四季における
発声法のスキルをちりばめながら、
美しい日本語の話し方とは何か
ということについて論じたものです。
第一章
日本語について 武器としての話し方
「話す」という視点は、
日本の教育が
見落としてきたことなのです。
「日本の教育現場では、
長く読み書き算盤が
重視されてきました。
読み書きの後に
いきなり算盤ではなく
読み書き話すでなければ
ならなかったはずです。」
第二章
母音法 正しい発声のために
母音の発音を徹底的に正すことで
五十音のすべてを
きれいに発音できるようにする
手法について記されています。
一音一音分離させて
発音することの大切さを、
日本語の構造を踏まえて
論理的に説明しているのです。
その発声方法や
練習の仕方も述べられています。
実際に行ってみると、
やはり自分の話し方が
美しくなっていることを実感できます。
第三章
呼吸法 腹式呼吸と声の出し方
それまで演劇界で語り継がれてきた
発声法が間違ったものであること、
そして正しい発声方法とは
どんなものであるかを、
科学的な見地から解説しています。
そして実際の練習方法についても
詳しく紹介されています。
第四章
フレージング法
言葉はどこで切るべきか
句読点「。」や「、」は、
文章を目で読みやすく
するためのものであって、
声に出して読むときの
区切りはまた異なる。
言われてみて始めて気づきました。
論理的に台詞の切れ目を
考えることが大切なのだそうです。
しかも
劇団四季では脚本全編について、
それを徹底的に研究し、
実践しているというのですから
驚きです。
言葉は相手に伝わらなければ
意味をなさない。
相手に伝えるためには
美しい日本語を話せなければならない。
そのための方法が
「母音法」
「呼吸法」
「フレージング法」なのです。
観念的な思考を排し、
どこまでも科学的かつ論理的に
展開している本書は、
日本語について
新しい視点を提示しています。
高校生に薦めたい一冊です。
※本書にはさらに
「第五章 劇団四季の歴史」が続きます。
この部分は
劇団四季愛好者向けかもしれません。
(2019.3.19)
