「あの文豪の素顔がわかる 文豪図鑑」

今の子どもたちはイケメンキャラに弱い

「あの文豪の素顔がわかる 文豪図鑑」自由国民社

いやあ、ついに出ましたか。
近頃は何でも
キャラ化するのが流行りですから、
出て不思議ではないのですが。
漱石や芥川など日本だけでなく、
ドストエフスキーや
ヘミングウェイなど海外、
そして紫式部や
清少納言など古典から、
約50名の文豪を
キャラ化して図鑑にしています。
当然全員が細身で長身の
イケメンキャラ。

梶井基次郎まで
美男子になっています。
文学通の人間なら
もしかして怒り出すかも知れない一冊。
でも、意外にいけます。

ページは文豪一名につき4ページ。
1ページ目には
キャラクターと作家データ。
2ページ目には
エピソードと簡単な年譜。
このエピソードがなかなか面白いのです。
夏目漱石であれば、
「成績はいつでも主席・その『脳』は国宝級」
「恋した女性は親友の婚約者…」
「男の友情に涙・親友正岡子規」
「木曜日は未来の文豪が家に集結」
という具合です。
中には文学に
関係のないものもあるのですが、
そこがまたいい味を出しています。

3・4ページ目には
「読んだ気になる代表作ガイド」として、
代表作3作の簡単な内容と
読みどころが押さえられています。
そして「作品のポイント」として、
その作家の文学的傾向が
説明されていて、
作品理解に
つながるようになっています。
加えて作品中の
名文・名セリフを解説した
「文豪の名言・名文」まで
収録されています。

はじめの見開き1・2ページ目で
読者の目を引きつけ、
次の見開き3・4ページ目で
文学へと誘う。
計算された構成なのです。
美男子文豪キャラは
単なるアイ・キャッチにすぎません。
すべては読み手を
自然に文学の世界へと
導くための手段なのです。
これなら文学に縁遠い若者たちを
魅力ある文豪の世界へと
勧誘することができる
(かも知れない)と思います。

勤務校の学校司書に聞いたところ、
新潮文庫版の
国木田独歩「武蔵野」は
これまで誰も
借りた生徒がいなかったものの、

試しに角川文庫版の
イケメン表紙のものを置いたら

何人かがさっそく
借りていったとのこと。
今の子どもたちは
イケメンキャラに弱いのでしょう。

文学を冒涜する行為、
などといきり立つ必要はありません。
ここから文学に入りこむ子どもたちが
わずかでもいるならば、
それで良しなのです。

本書も司書推薦の一冊。
勤務校の学校司書の慧眼には
いつも驚かされます。

※ネットで調べると、
 「文豪ストレイドッグス」という
 アニメもあるとか。
 時代は進化しています。

(2019.3.23)

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