「脅威」に立ち向かう人間の姿
「小説 君の名は。」(新海誠)角川文庫
山深い田舎町に暮らす
女子高生・三葉は、
自分が男の子になる夢を見る。
一方、
東京で暮らす男子高校生・瀧も、
山奥の町で自分が
女子高生になる夢を見る。
やがて二人は周期的に入れ替わって
生活していることに気付く…。
男女の入れ替わりなんて、
昔からたくさんあるだろうに。
2016年に映画「君の名は。」が
大ブレイクしたとき、
そう思っていました。
ディズニーでもない
スタジオジブリでもないアニメ映画が
何で「シン・ゴジラ」
(こちらは観ました)を
超えるヒットになるんだ!?
無視を決め込んでいたのでした。
でも2017年7月のBlu-rey発売とともに、
またにわかに話題となり…、
まあ読むぐらいはしてみるか、
とAmazonで\1中古本をポチ。
すみませんでした。
完全になめきっていました。
面白かったです。
私が悪かったです。
50を過ぎたおじさんは
素直に感動しています。
おじさん的感動部分①
すれ違う青春
主人公二人はなかなか出会えません。
それどころか
お互いの存在を認識し合うのも
困難な状況。
本当に「出会う」のはラストシーン。
決して甘ったるい恋愛ものに
堕していないのが気に入りました。
おじさん的感動部分②
時空を越えたつながり
時間も空間も超越して魂が交錯する。
高校生の日常生活から
突然天変地異騒動につながる。
科学と神話が巧みに配合された展開に、
ページをめくるごとに
高揚感を覚えました。
おじさん的感動部分③
見え隠れする重いメッセージ
二人は互いの名前さえ忘れます。
「大切なものを忘れてはならない」
というメッセージを、
「自然災害の忘却への警鐘」の上に
重ね合わせ、
読み手の心に深く刻み込む。
東日本大震災犠牲者への
慰霊のようにも思えます。
私はこの部分が
最も重要な要素と感じた次第です。
恋愛青春的雰囲気と
SF的要素の2つの衣の奥に、
自然災害に翻弄される運命にある
日本人への慰謝のようなものが
確かに感じられます。
考えてみれば映画公開の2016年は
かの震災から5年が経過した年でした。
その年に
「シン・ゴジラ」が実写とCGを駆使して、
一方で「君の名は。」は
高精細なアニメの手法を用いて、
共に「脅威」に立ち向かう
人間の姿を描いていたのだったとは。
今頃ようやく気付きました。
よし、「シン・ゴジラ」と「君の名は。」の
Blu-rayを買うぞ!…でもお金が…。
(2019.4.5)