「カラマーゾフの兄弟」(ドストエフスキー)②

第2部は青年の魂の変容の物語

「カラマーゾフの兄弟1~5」
 (ドストエフスキー/亀山郁夫訳)
  光文社古典新訳文庫

長老の言葉に従い、
アレクセイは父の家に向かう。
父と長兄の確執は激しさを増す。
加えて不幸な少年・イリューシャや
スネギリョフ大尉との出会い、
そして次兄・イワンが語る
「大審問官」の話から、
アレクセイの心は
激しく揺れ動く…。

長男・ドミートリーは
父親殺しの疑いで逮捕され、
次男・イワンは精神を病み、
この二人の描かれ方は本作品において
かなりドラマチックです。
それに対して
20歳の三男・アレクセイは
フョードル殺害事件には
一切関わっていないためか、
どうしても地味な印象に
終わってしまいます。
しかしこのアレクセイこそ、
本作品の主人公なのです。
アレクセイに視点を置いたとき、
その読みどころは全編の中でも
第2部に集約されるでしょう。
修道僧として生きている彼の心は、
第2部で大きく揺れ動きます。

第4編「錯乱」での、修道院の
反乱分子・フェラポント神父との関わり、
目の当たりにした父と長兄の確執、
ロシアの未来に繋がる
「少年たち」との出会い、
そして当時のロシア社会の歪みの
犠牲になっている
二等大尉スネギリョフとの会談、
すべてがアレクセイの心を
揺らしていきます。
信仰の本質とは何か、
この国・ロシアの社会はどうあるべきか、
彼の心は揺さぶられ続けるのです。

第5編「プロとコントラ」では、
次兄・イワンとのやりとり、
特にイワンが創作した
物語詩「大審問官」から、
神の存在について動揺しながらも
熟考していくのです。

第6編「ロシアの修道僧」では、
精神的な父親である長老ゾシマの
信仰の本質に触れるとともに、
ゾシマへの畏敬の念を深めていきます。

それらすべてが
第3部第7編「アリョーシャ」に繋がり、
教会内の反長老派の騒動に接した際、
彼の魂に変容を引き起こすのです。
そしてその第3部では、アレクセイは
「遺伝上の父」であるフョードルの死と
「精神的な父」であるゾシマの死を、
わずか一日で経験することになります。

修行僧として信仰の道に生きる彼が、
ゾシマの言葉に従って
俗世で生きようとしたとき、
彼に何が立ちはだかるのか、
そして彼はどのように
成長・変遷していくのか。
第2部は若き主人公・アレクセイ青年の
魂の変容の物語です。
読み終えたとき、「カラマーゾフ」は
こんなに面白い作品だったのかと
唸らずにはいられないはずです。

(2019.5.7)

Мирослав ЛисанецによるPixabayからの画像

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