第5巻の丁寧で豊富な解説と資料が魅力
「カラマーゾフの兄弟1~5」
(ドストエフスキー/亀山郁夫訳)
光文社古典新訳文庫

一昨日昨日と計4回にわたって
取り上げた本作品。
翻訳版については
本書・光文社古典新訳文庫版
亀山郁夫訳(全5巻¥4320)以外では、
Amazonで検索すると、
新潮文庫版原卓也訳(全3巻¥2829)、
岩波文庫版米川正夫訳(全4巻¥3974)
の2つが現在流通しています。
新潮文庫版が最安の価格なのですが、
これから本作品を
読もうと思っている方には
本書・光文社版をお薦めします。
光文社版のいいところ①
文字と行間が大きく、読みやすい
大長編ですので、読みにくければ
リタイヤする可能性大です。
特に私のような
50を過ぎた人間にとっては、
活字が大きく読みやすい光文社版は
とてもありがたかったです。
光文社版のいいところ②
本作品の構成に合わせた分冊
本作品は
「第1部~第4部+エピローグ」という
構成ですが、
それを意識して分冊化したのは
光文社版だけです。
そのため5分冊となり、
価格は割高になるのですが、
作品をじっくり味わうには
この方が絶対いいはずです。
光文社版のいいところ③
読みやすさを考えた最新の翻訳
亀山郁夫訳は
現代的で読みやすくなっています。
店頭で頁をめくって比べただけで
わかると思います。
ここ十年くらいの間に
新訳ブームが広がったのは
うれしい限りです。
光文社版のいいところ④
丁寧で豊富な解説と資料
実は第5巻の大部分は解説です
(エピローグは63頁のみ)。
この解説(それも
「ドストエフスキーの生涯」「年譜」
「解題:「父」を「殺した」のはだれか」の
三部構成)が、作品理解に
大いに役立ちました。
本作品の場合、
アレクセイ、ドミートリー、イワン、
フョードル、スメルジャコフ等の
登場人物が、
それぞれどのタイミングで
何をしているか、
メモをとりながら読もうとしないと
把握しきれない部分があります。
しかしそうしたことが、解説にある
「物語のダイアグラム」を見ると
一目瞭然なのです。
文学作品の巻末に付される解説には、
まったく的を外した内容のものや、
独りよがりの持論展開など、
読むに堪えないものも
見かけるのですが、
本書の解説は違います。
読み手に立ち、
読み手の理解に必要なものを
十分に提供しようとする姿勢が
鮮明に現れています。
初めて「カラマーゾフ」を
読むのであれば光文社版。
これで決まりです。
※ちなみに私は
中古を全5巻計800円で購入しました。
800円で楽しんだ
10連休となりました。
充実していたものの、
ちょっと淋しいか…。
(2019.5.9)
