「富士山噴火と南海トラフ」(鎌田浩毅)

巨大地震と巨大噴火の中で生き抜くDNA

「富士山噴火と南海トラフ」
(鎌田浩毅)講談社ブルーバックス

近年何かと話題になる
「南海トラフ巨大地震」。
今後30年以内に
約70%の高い確率で発生し、
最悪の場合、死者が32万以上と
推定されている巨大地震です。
その名称となっている
「南海トラフ」とは、
静岡から九州にかけて
大陸側のユーラシアプレートに
フィリピン海プレートが沈み込む
海底の溝状の地形のことです。
その南海トラフは巨大地震だけでなく、
富士山噴火とも関係しているのです。

富士山噴火も巨大地震同様に、
周期的に確実に訪れるものであり、
避けることのできない
災害であることは知っていました。
そしてその「富士山噴火」が
「南海トラフ巨大地震」と連動して
起こる可能性が高いということを、
改めて知ることができました。

本書は鎌田浩毅氏による
2007年発刊の「富士山噴火」
改訂版に当たります。
前半第Ⅰ部は前著を簡略化し、
まとめたものになります。
富士山噴火による被害の想定を
事細かくシミュレーションしています。
注目は第Ⅱ部です。
ここで「3.11」以後の
日本列島の変化についての
詳しい説明が載せられています。
そして富士山噴火と
南海トラフ巨大地震との連動の仕組みが
詳解されているのです。

地震や火山などの地学事象は、
それぞれが独立して
起きているわけではないのです。
地球のダイナミックな
運動の表れとして、
それぞれが関連し合いながら
地表に現れているのです。
日本に住んでいる私たちは、
地震や火山といった自然災害から
逃れられない運命にあります。
しかし「防災」は難しくとも
「減災」は普段からの備えがあれば
十分に可能なのです。
そのためにも私たちは
地球のメカニズムについて
熟知していなくてはなりません。

「考えたくない未来」に
目を背け続けた結果、
私たちの国は「3.11」の後に、
「福島第一原発事故」の悪夢を
招いてしまいました。
南海トラフ巨大地震一つでさえ
「考えたくない未来」なのですが、
それと連動して起こる
富士山噴火についても
目を背けているわけには
いかないのでしょう。

本書の最後に書かれてある
著者の言葉が希望をもたらします。
「一見、絶望的にも思える
 変動帯・日本列島に暮らしていても、
 われわれの祖先は
 死に絶えることなく、
 現在まで発展を続けてきた。
 いわば、巨大地震と巨大噴火の中で
 生き抜くDNAを持っているとも
 考えられるだろう。」

そのDNAを信じて、
いつか来る「その日」に対して
しっかりとした備えをしておくべき
なのでしょう。

※旧版「富士山噴火」は、
 カラー図版を多く掲載し、
 視覚的にもわかりやすい
 科学書でした。
 改訂版となる本書が出版されても、
 やはり価値のある一冊であることに
 変わりありません。

※参考までに章立てを。
第Ⅰ部 富士山噴火で起こること
第1章 火山灰
第2章 溶岩流
第3章 噴石と火山弾
第4章 火砕流と火砕サージ
第5章 泥流
第Ⅱ部 南海トラフと富士山噴火
第6章 地理と歴史から見た富士山噴火
第7章 「3.11」は日本列島をどう変えたか
第8章 南海トラフ巨大地震との
    連動はあるか
第9章 山体崩壊のおそるべきリスク
第10章 富士山の噴火予知は
    どこまで可能か
第11章 活火山の大いなる「恵み」

(2019.5.30)

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