いかん、こんなところで涙を流すわけには…。
「インコの手紙」(あきばたまみ)経済界

いかん、こんなところで
涙を流すわけには…。
勤務校の図書館の
新館コーナーにあった小さな絵本。
何気なく手にとって、
ぱらぱらとめくってみました。
本の世界に引き込まれ、
最後の場面に来たとき、
不意に涙が込み上げました。
放課後の図書室で
50のおじさん教師が泣いているなど、
気味が悪い以外にありません。
すぐさまページを閉じて
借りてきました。

「正直言うと
ぼくはあなたがキライです」
から始まる本書。
飼い主に対する
インコの文句が続きます。

「いつもぼくをぎゅーっとつかむし」
「水はとりかえてくれないし」
このへんまでなら、
飼い主は忙しい身の上か、
性格がだらしないか、
いずれにしてもありがちです。
それ以降が面白いのです。

「ボンドであたまにトサカつけたり」
「油性のペンでまゆげ落書きしたり」
「ぼくの前で
チキン食べたりするんだもん」
「ぼくの前で
ネコのなきまえするんだもん」
ここまでくると、
大人ではないとわかります。
子どもの仕業です(イラストにも
ちゃんと女の子の姿が描かれている)。

いたいけなインコに
こんなイタズラをするのです。
余程ひねくれているのでしょう。
でも、子どもがひねくれているのは、
そこに何か大きな
理由があると考えるべきです。
飼い主の子どもは
何か満たされないものがあるのです。
そしてそれを埋めてくれているのが
このインコなのだと
考えるべきでしょう。
あるある、こんなこと、
というふうに読み進めていくと、
突然転機が訪れます。
「だけどひとつ質問です」
「ぼくが死んでゆくときに…」
ここからはぜひお読み下さい。
私は涙が止まりませんでした。

作者あきばたまみは
巻末の記載によると
イラストレーターであり
シンガーソングライター。
絵本に付された文章は
歌詞のような印象を受けました。
おそらく歌になっているのだろうと思い、
ネットで探したらありました。
こちらの方も感動ものです。
YouTubeでどうぞ。
本書は幼児向けの絵本ではなく、
小中学生から大人を
対象にしているものと考えます。
こうした本は
一般の公立図書館のリストからは
外れがちなのではないでしょうか。
中学校の図書室ならではの選書です。
感性豊かな学校司書のいる
我が中学校は
本好きの子どもたちがたくさんいます。
(2019.6.22)
