本書の最大の特徴は豊富なカラー写真です
「カラー版 ハッブル望遠鏡が見た宇宙」
(野本陽代・R.ウィリアムズ)岩波新書
私たちは
ハッブル宇宙望遠鏡がとらえた
さまざまな宇宙の姿を
お目にかけたいと考えている。
これを見ると、
私たちの住む宇宙が、
じつに多種多様な造形と色彩に
富んでいることに
驚かれるにちがいない。
宇宙一四〇億年の歴史を…。
ハッブル望遠鏡を知っていますか?
地上の望遠鏡ではありません。
宇宙空間に設置された望遠鏡です。
ハッブル望遠鏡以前、宇宙の研究は
地上の望遠鏡で行われていました。
その天文台のほとんどは
高地に建設されていました。
ハワイ・マウナケア山頂にある
マウナケア天文台群や
アンデス山脈山頂の天文台などの
研究成果が新聞を賑わしていた
記憶があります。
なぜ高地なのか?
天体からの微かな光を観測するときに、
最も妨げとなるのが「大気」なのです。
高地であればその分
大気の層が薄くなり、
観測しやすかったのです。
それならいっそ、
大気のない宇宙に造ってしまえ!
そうして造られたのが
ハッブル宇宙望遠鏡です。
長さ13.1m、重さ11tの筒型で、
内側に反射望遠鏡を収めており、
主鏡の直径2.4mの
宇宙の天文台です。
大気による影響を受けないため、
地上からでは不可能な
高い精度での天体観測が
可能となったのです。
さて、ハッブル望遠鏡が
打ち上げられたのは1990年(平成2年)。
もう30年近く昔の話です。
本書の出版も1997年。
新書本、自然科学本の鮮度としては
いささか古びてきたのは否めませんが、
本書の最大の特徴は
豊富なカラー写真です。
1997年時点でハッブル望遠鏡の捉えた
天体の写真が
100点ばかり収録されています。
これがいいのです。
宇宙に行くことのできない私たちは、
宇宙の神秘を実感するためには
宇宙関連のNHKスペシャルの
映像を見るか、
こうした鮮明な写真の掲載されている
書物を見るかしかないのです。
実に美しい写真ばかりです。
すでにおなじみとなっている
「ワシ星雲」、
「砂時計星雲」、
シューメーカー・レビー第9彗星の
「木星衝突」をはじめとして、
ため息の出るくらい美しい画像が
収録されています。
これを見ているだけで
幸せな気持ちになることができます。
文章はもちろん難しい内容が
書かれてあります。
義務教育で習得した知識だけでは
太刀打ちできない部分もあります。
しかし、そんな部分はすっ飛ばして、
この写真を見るだけでも
気分は宇宙飛行士・天文学者です。
著者・野本陽代氏は、この続編として
2冊岩波新書に執筆されています。
そちらについても
後日取り上げたいと思います。
本は私たちを
宇宙にまで連れて行ってくれます。
やはり読書は素晴らしい。
※2019年8月現在、なぜか
続編のほうが絶版状態ですが、
本書は流通しているようです。
岩波ジュニア新書にも野本氏の
素晴らしい一冊があります。
(2019.8.21)
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