「五十年後」(ドイル)

思い続け、信じ続け、待ち続けたメアリー

「五十年後」(ドイル/延原謙訳)
(「ドイル傑作集1」)新潮文庫

「ドイル傑作集1」新潮文庫

「五十年後」(ドイル/延原謙訳)
(「百年文庫002 絆」)ポプラ社

「百年文庫002 絆」ポプラ社

英国ブリスポートの
工員・ジョンは、会社倒産の際、
次の職場として
カナダの工場を紹介される。
必ず迎えに来ることを
婚約者・メアリーに約束し、
彼は船に乗る。それ以来、
メアリーのもとへは
彼からの一通の手紙すら
届かなかった…。

コナン・ドイルといえば
シャーロック・ホームズ、
シャーロック・ホームズといえば
コナン・ドイル。
ドイルはホームズ・シリーズしか
書いていないものとばかり、
私は思い込んでいました。
違いました。
こんな素晴らしい作品を
書いていたなんて。

〔主要登場人物〕
ジョン・ハックスフォード

…一流のコルク職人だったが、
 工場閉鎖に伴い、
 モントリオールへ渡る。
 そこで悪漢に襲撃され、
 命を取り留めるものの記憶を失う。
メアリー
…ジョンの婚約者。
 ジョンの帰還を五十年間待ち続ける。
チャールズ・フェアベアン
…英国でのジョンの雇用主。
 ジョンにモントリオールの
 仕事を紹介する。
マッキンレー
…モントリオールでのジョンの雇用主。

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今日のオススメ!

ジョンはカナダ到着後、強盗に襲われ、
九死に一生を得たものの、
記憶を失ってしまったのです。
彼はその地で
工員となるやいなや才能を発揮、
三十年後には大工場の支配人にまで
昇格するのです。

七十歳になり、
仕事を退いたジョンは、ある日、
港に停泊している船のボディーに
故郷ブリスポートの名前を見つけます。
彼は記憶を取り戻し、
五十年ぶりに故郷を訪ねるのです。
経済的に発展した街、その一角に、
不釣り合いなようにひっそりと建つ、
見覚えのある古びた家を、
彼は見つけます。
あとは涙涙の感動的ラストシーンです。
結末が予想できるにもかかわらず、
やはり涙を誘われてしまいます。

妻が夫を待つ物語といえば、映画では
「幸せの黄色いハンカチ」が有名です。
小説では以前取り上げた森鴎外
「じいさんばあさん」が私は大好きです。
「ハンカチ」の光枝は
刑務所に入った夫を六年間待ちました。
「じいさんばあさん」の妻・るんは、
流配になった夫を
三十七年間待ちました。
本作のメアリーは、
それらを凌ぐ五十年です。
五十年間も愛する人を思い続け、
信じ続け、待ち続けたのです。

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物語として成り立つためには、
待たれる夫も
人格者である必要があります。
六年間待ってもらった勇作も、
三十七年間待ってもらった伊織も、
それぞれ間違いは犯しましたが、
実に誠実な人柄です。
本作のジョンもまた、実直な人間です。
出世しても決して派手な生活はせず、
慎ましやかに
五十年過ごしてきたのです。
記憶は失われていても、
待たせている人があることを
潜在意識の中で感じていたのでしょう。

難しい文学も好きなのですが、
こうした純粋に感動できる文学もまた
大好きです。
ホームズのような
冷徹な分析眼の作家かと思いきや、
存分に熱い血の通った作品として
結実したドイルの逸品です。
幸せな気分に浸りたい方にお薦めです。

(2019.10.7)

〔新潮文庫「ドイル傑作集1」〕
消えた臨急
甲虫採集家
時計だらけの男
漆器の箱
膚黒医師
ユダヤの胸牌
悪夢の部屋
五十年後
解説:延原謙

〔新潮文庫「ドイル傑作集」〕

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〔関連記事:ドイルのホームズ作品〕

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〔ポプラ社「百年文庫002 絆」〕
善助と万助 海音寺潮五郎
五十年後 ドイル
山椿 山本周五郎

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