「中国のいまがわかる本」(上村幸治)

巨大で複雑な国・中国を理解する出発点として

「中国のいまがわかる本」(上村幸治)
 岩波ジュニア新書

沖縄県の尖閣諸島周辺の接続水域に、
中国船が200隻以上侵入したとして、
外務省は東京の中国大使館公使に
抗議した
(2016年8月6日のニュースより)。

中国との関係が悪くなり続けて
かなりの時間が経ちました。
私などは
パンダのカンカン・ランランの寄贈や
鄧小平氏来日の記憶が
おぼろげにあるものですから、
どうしてここまで
こじれてしまったのだろう(最近
落ち着いてきているのですが)という
思いを抱いていました。

そうしたこれまでの
日中関係の歴史を振り返り、
現在の中国の情勢を解説し、
これからの両国の関係の在り方を
提言しているのが本書です。

「第一章 日中関係から考える」
2000年以降の反日デモを取り上げ、
反日に至る中国国民の
感情を説明するとともに、
根底には愛国主義教育が
関わっていることを指摘しています。

「第二章 歴史のうねり」
アヘン戦争から
中華人民共和国誕生までの、
中国の近現代史に注目し、
近代化に立ち後れ、
欧米と日本に侵略された
中国の悲しい歴史について
取り上げています。

「第三章 変わりゆく暮らし」
「第四章 変貌する大地」

中国の若者の意識の変化と
中国社会の格差の広がり、
そして広大な国土の乱開発の現状と
その問題点について記しています。

「第五章 未来の風」
「第六章 日本と中国の未来」

天安門事件を軸に、
中国の民主化がなぜ進まないのか、
その原因と病理をひもといています。
さらに、靖国問題から始まった
日中関係の悪化を振り返り、
未来に視点を置いた
両国の関係づくりを考察しています。

ただし、本書一冊を読んで
中国のすべてが
理解できるわけではありません。
本書出版は2006年。
この10数年間、中国も日中関係も
変化を遂げています
(改訂版が望まれるのですが、
著者はすでに亡くなっています)。
本書を出発点として、
近くて遠い国・中国に関心を持ち、
日々の新聞等を注視し、
両国関係について
自分の考えをしっかり持つことが
大切であると考えます。

本書の結び。
「日本の若い世代は大変です。
 歴史の負の遺産を背負いながら、
 巨大化していく複雑な国と
 向き合わないと
 いけないのですから。
 でもそれは、見方を変えると、
 とても挑戦的で刺激的で、
 面白いことなのかもしれません。」

同感です。

(2019.11.12)

JLB1988によるPixabayからの画像

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