タイトルを「ハッブル宇宙美術館」と変えてもいい
「カラー版 宇宙はきらめく」
(野本陽代)岩波ジュニア新書
宇宙とは
こんなに美しいものなのか!?
紙面の約半分を占める
豊富な天体写真に圧倒されます。
本書はハッブル宇宙望遠鏡を
はじめとする天文衛星や
ハワイ・マウナケア山上などに
建設された望遠鏡がとらえた
貴重な写真をふんだんに使い、
宇宙の真の姿を提示したものです。
それにしても美しすぎます。
タイトルを「ハッブル宇宙美術館」と
変えてもいいくらいです。
このような美しい宇宙の写真は、
私が子どもの頃にはありませんでした。
これは宇宙と高山山頂に設置された
望遠鏡の成果です。
現在、ハッブル以外にも
スピッツァー宇宙望遠鏡や
チャンドラX線観測衛星など、
宇宙に設置された望遠鏡が
大活躍しています。
なぜ望遠鏡を宇宙に設置するのか。
最大の利点は、地球の大気による
電磁波の吸収がないことです。
ガンマ線・X線・紫外線・遠赤外線などは
大気に吸収されてしまうため、
地上からの観測が困難なのです。
大気圏外に望遠鏡を設置することで
大気に邪魔されずに
それら可視光線以外の観測を
行えるというわけです。
加えて大気の流動による
像の揺らぎがないことも
大きな利点です。
ハッブル宇宙望遠鏡は
紫外線から近赤外線までの
波長域の観測を行いますが、
大気による像の揺らぎがないことから、
望遠鏡の回折限界まで空間分解能を
向上させることができるのです。
さらに、
ハワイ・マウナケア山頂の天文台からの
広い視覚で写した写真も加わります。
市街地から離れた
光害のない暗い場所であること、
晴天率が高いこと、
気流が安定していること、
広い視界を確保できる地形であること、
そうした条件を満たした
高山山頂からの写真は
きわめて鮮明です。
条件の優れた宇宙と高山山頂の
望遠鏡でとらえた写真群。
それゆえ美しい写真を
つくりあげることができたのです。
著者・野本陽代氏の解説も、
初心者の目線まで降りて書かれてあり、
簡潔かつわかりやすい文章です。
宇宙については
中学校3年生で学習するのですが、
中学校1・2年生でも
十分に理解できる内容です。
学術的に過ぎることなく、
「冬はすばる」「春は銀河」
「夏は天の川」「秋は深宇宙」
「南天はマゼラン雲」「太陽系は探査」と
章立てされ、
私たちが肉眼のレベルで
観測できるような範囲から
始めています。
難しい理論はさておき、
視覚的に宇宙を理解する。
そのための一冊です。
(2019.12.25)