高校生のための化学の素晴らしい入門書
「マンガ 化学式に強くなる」
(高松正勝原作・鈴木みそ漫画)
講談社ブルーバックス

化学の授業で
「モル」に苦戦していた
女子高校生・幸は、
家庭教師として同級生から
兄(つくばの研究者)を
紹介される。
花火の夜に初めて出会った彼は
予想外のイケメン。
幸はさっそく彼から化学を
教えてもらうことにする…。
お堅い内容の
講談社ブルーバックスに、
ソフトな漫画がありました。
漫画とはいえ、
高校生のための化学入門書として
素晴らしい内容となっています。
本書の素晴らしい点①
中学校の基礎基本からスタート
いきなり高校化学の内容から
始まるのではありません。
中学校1年生の
「物質」と「物体」の違いから始まり、
「純物質」「混合物」「単体」「化合物」と、
中学校の化学分野から
解説しています。
そして最終的には
高校化学基礎の最難関点、
「モル」に到達していくのです。
「中学校理科化学分野」から
「高校化学基礎」への
橋渡しとして機能しています。
本書の素晴らしい点②
化学の本質をしっかり紹介
高校生にとって
化学の理解の難しい点は、
本質がよく伝わらないことに
あると思います
(伝えようとしない教科書にも
問題がある)。
本書は「周期表」や「モル」の本質を
わかりやすく紹介することに
成功しています。
「周期表」は
単なるマトリックスではなく、
原子の構造と結びついて
各元素のふるまいを説明できる
洗練された体系的な表であり、
「モル」は
目に見えない原子・分子と
実際に使う質量や体積を
結びつけるための
数の単位であることを、
懇切丁寧に解説しているのです。
本書の素晴らしい点③
生徒目線に立った内容
ともすれば
教える側の論理で書かれがちな
自然科学の入門書にあって、
本書は徹底して
生徒の側からの目線に立って
編集されています。
難しく感じるところ、
つまずきやすいところに
重点を置いています。
特に「モル」に関しては
全体の4割のページを割いて
徹底的に扱っています。
タイトルは「モルに強くなる」に
変えてもいいくらいです。
それでいて、特徴的なキャラ設定、
絶妙な笑いの間、甘いラブコメ等々、
漫画としてのツボも
しっかりと押さえています。
十分に面白く読むことができます。
化学基礎を履修しなければならない
高校生にお薦めですが、
中学校3年生が高校での化学授業を
模擬体験する上でも役立つ一冊です。
(2020.2.24)
