中学校1年生に薦めたい本vol.3

詩集入門~詩の味わい方が学べる8冊

以前にも書きました。
書店で中学生が詩集を手にして
レジへ向かう。あり得ない光景です。
詩集こそ、
我々読書経験の豊富な大人が、
「これ読んでみろよ」と
薦めるべき分野であると
確信しています。

でも、いきなり中原中也を薦めても
消化不良を起こすだけです。
ものには順序があります。
詩を味わう入門編とも呼べる8冊を
セレクトしました。

その1
「詩ってなんだろう」(谷川俊太郎)

「いないいないばあ」から堀口大学まで、
いろはうた、ことわざ、なぞなぞ、
しりとり、アクロスティック、
俳句、短歌、賛美歌に至るまで、
何でもござれです。
谷川俊太郎が集めた
「これも詩だよ、あれも詩なんだよ」
というような一冊です。

その2
「この世界のぜんぶ」(池澤夏樹)

池澤夏樹の詩は、
少年の心を持った大人が、
自分の見た世界をそのまま切り取り、
そしてその心のまま綴った
世界ではないかと思うのです。
詩と絵のコラボ作品。
子どもには詩の入門として、
大人には癒やしとして最適の一冊です。

その3
「新編 あいたくて」(工藤直子)

中学校1年生の教科書で
真っ先に登場する詩の作家が工藤直子。
ご存じ「かまきりりゅうじ」です。
本書においては、工藤直子は
人間を擬自然化せず、
人間の目線で人間を見つめています。
この詩集も詩と絵の素晴らしい、
癒やされる一冊です。

その4
「阪田寛夫詩集」(阪田寛夫)

「サッちゃん」「おなかのへるうた」
「ねこふんじゃった」は
誰しも子どもの頃に
歌った記憶があるはずです。
しかし「作詞したのは誰?」と
尋ねられたとき、すぐに「阪田寛夫」と
答えられる人が何人いるでしょうか。
童心に返ることが出来る詩集です。

その5
「いのちのうた」(まどみちお)

「ぞうさん」をはじめとする一連の詩、
それぞれを単独で読むと
気付きにくいのですが、
そこにはしっかりと「自己有用感」や
「自己肯定感」が織り込まれています。
ありのままの自分を
ありのままに受け入れられれば
どんなにか幸せだろうと思います。

その6
「新川和江詩集」(新川和江)

新川和江の詩には難しい表現や技法が
比較的少なく、中学生でも情景を
思い浮かべやすいという点が魅力です。
そして彼女の詩集全体には、
「子どもを見守る母の視点」と、
「社会に強く生きようとする
一人の人間としての視点」の両方が、
適度に現れてくるのも魅力です。

その7
「金子みすゞ童謡集」(金子みすゞ)

「みんなちがって、みんないい」
というフレーズには、
「共生」の意識が読み取れます。
大正時代の思想としては
極めて先進的といえるでしょう。
しかし26歳の若さで早世した彼女の
詩の行間からは、底知れない悲しみが
漂ってきます。

その8
「教科書でおぼえた名詩」(文藝春秋編

詩の入門書としての一冊です。いや、
詩の「ベスト盤」といえるものです。
教科書に載った詩を中心に、
どこかで見たこと聞いたことのある詩が
満載です。
俳句、漢詩など、
「あっ、これ教科書に載ってた!」と
思わずつぶやいてしまう一冊です。

大人のあなた、
まずはあたながこれを読んで、
自分の身のまわりの子どもたちに
「これいいぞ、読んでみな」と
薦めてみてほしいのです。
読書経験を積み重ねた大人として。