ナゾの生物モグラ!?
「モグラ博士のモグラの話」
(川田伸一郎)岩波ジュニア新書
モグラを知らない人は
いないと思うのですが、
生きているモグラを見たことのある人は
案外少ないのではないでしょうか。
私も見たことはありません。
一応、理科教師なのですが。
かつて住んでいた家の庭は、
春になって雪が溶けると
モグラのトンネル跡が
たくさん見られたのですが、
モグラ本体はついぞ
見かけることはありませんでした。
本書の冒頭にあるように、
私もモグラのイメージは
ヘルメットにサングラス、
ツルハシを持ったマンガ的イラストしか
頭に浮かびません。
あと特撮で鼻にドリルのついた
モグラ型ロボットでしょうか。
モグラという生きものは、
一般にあまり知られていないどころか、
研究者の間でもまだまだ
未知の存在だったとは驚きです。
驚いたこと①
日本では全国にモグラが分布しているが
北海道にはいないということ。
そしてその原因は
まだ不明であるということ。
モグラによる青函トンネルは
開通してなかったのです。
驚いたこと②
モグラを観察しやすい飼育法として、
空中金網トンネルという方法が
あるということ。
土の中では生態がわからないから、
空中で飼う。
目から鱗です。
驚いたこと③
まだ誰もモグラの繁殖に
成功していないということ。
生きたまま捕まえるのも大変。
そしてどのようにして
つがいをつくるかも
不明であるとのこと。
宇宙旅行が可能になったり
ヒトのDNAが
解明されるようになっても、
実はモグラのことすら
人類はよくわかっていなかったのです。
足下が暗いとはまさにこのことです。
さて、本書に描かれているのは
モグラの生物学的知見や
モグラ研究の
面白さだけではありません。
筆者自身の、
科学者としての歩みが語られています。
ああ、このようにして
大学生から研究者へと
進んでいく道があるのか、と
うなずきながら読み進めました。
理科で動物について学んだ
中学校2年生に薦めたい一冊です。
また、将来自然科学の研究者の道を
歩みたいと考えている
中高生のみなさんにも
強く薦めたいと思います。
(2020.3.6)