久しぶりに元気の出る本に出会いました
「先生!」(池上彰編)岩波新書

久しぶりに
元気の出る本に出会いました。
近年は教師バッシングが激しくて、
肩身の狭い思いをしていました。
でも、元NHKのニュースキャスター
池上彰氏の編集した本書は、
教員に対する
応援歌のような一冊です。
「先生!」この言葉から喚起される
エピソードは何ですか?という
池上氏の呼びかけに答えた、
各界の著名人27名の回答です。
中には手厳しいお叱りもあるのですが、
子どもたちを家庭と学校が
一緒になって育てる、という
もっとも基本的スタンスに
立った意見が多く、励まされました。
また、広い分野からの人選であり、
さまざまな切り口から
教育をとらえているため、
示唆に富んだ考え方に
ふれることができました。
ロジェ・ルメールの
「学ぶことをやめたら、
教えることを
やめなければならない」という言葉は、
すべての先生、指導者が
噛みしめるべき言葉だ。
(山口香)
今の教育の現場の多くは、
何かに従うことはいつも教えてくれる。
そしてほとんど教えてくれないのは、
何かに「抗う」ということだ。
(安田菜津紀)
もがき、足掻いて
ジタバタする場所に君臨する大人と、
片一方で自由の空気を
見せてくれる大人と。
どちらが欠けてもつまらない。
(李相日)
子どもたちの柔らかい胸の内を
丁寧に感じ取ろうとする
教師のアンテナは、
「先生」と呼ばれ続ける中で
磨かれていくのではないかと
思っています。
(渡辺恵津子)
educaition(引き出す)のためには、
引き出す側が同じようなことを
やっていたのでは、
新しい引き出しは開けられない。
(姉小路祐)
すべて紹介したいくらいですが、
この辺にして、
収録されているエッセイの
タイトルと筆者をあげておきます。
センセイの最期 しりあがり寿
西日の渡り廊下で 天野篤
想像力は無限だ 岡野雅行
「歌の時間」 稲泉連
先生がくれた、光 押切もえ
先生は…… 関口光太郎
大切な「症状」 田中茂樹
手紙 増田ユリヤ
柔道とは? 山口香
中学・高校生に願うこと 柳沢幸雄
巨大な疑問符を与えてくれた 鈴木邦男
実はすごい、日本の教育 パックン
「抗う」こと 安田菜津紀
学びの同志おっちゃん 市川力
80歳を超えた中学生 太田直子
紅茶の味 李相日
ことばの裏にある子どもの声を聴く
渡辺恵津子
「消費者的感覚」に立ち向かう 武富健治
作る、壊す、作る 武田美穂
人生最初の「先生!」は…… 姉小路祐
逃げろ、逃げろ! 石井志昂
先生と子どもの関係 鈴木翔
色えんぴつ 乙武洋匡
詩が開いた心の扉 寮美千子
自分の物差し 山口絵理子
とらわれちゃだめだ 平田オリザ
学問を武器にして生徒とわかりあう
太田光
教員をとりまく環境は、
ここ3年くらいの間に
大きく改善されたように感じます。
それでもまだまだ教員は
ブラック公務員です。
私は土日の出勤がきわめて少ないため、
1ヵ月あたりのサービス残業は
40時間程度にとどまっていますが、
忙しい部活動を担当したときは、
土日の分を含めると
1ヵ月100時間を優に超えました。
公務員でありながら、
唯一終身雇用ではない職種です。
土日の部活動手当は8時間で3000円。
時給375円!
悪列極まる労働条件が
もっと解決されれば、学校は
さらに明るくなると思うのですが。
(2020.4.20)
