ものづくりは夢と希望と誇りに満ちている
「町工場・スーパーなものづくり」
(小関智弘)ちくま文庫
結論から言いましょう。
本書は子どもたちにイチオシです。
いや、無理にでも読ませるべき。
進路選択における
中学生必読の書と言っていいでしょう。
現代日本を支える、
中小ものづくり企業、
いわゆる町工場についてのルポです。
第一章
技術はだれのため、なんのため?
伊勢神宮に使われている釘について、
私たちが通常見ている
釘とちがう「和釘」を例にとり、
日本伝統の技術について述べています。
同時に、お伊勢参りの
一般庶民用に考案された、
「伊勢の片焼」「湯どり飯」等、
大量生産料理についても並べて書き、
善し悪しではない、
必要から生じる工夫こそがであると
論じています。
第二章
手先が器用でないと、
工場で働くのは無理か
私たちはどうしても
ものづくりは手先の器用さが
必須条件と思い込みがちです。
しかし、道具を工夫すれば、
人なみの、あるいはそれ以上の仕事が
できるということを説いています。
第三章
いまも生きている伝統的な技術・技能
一見何の関係もない分野の
伝統的な技術が、
現代工業に効果的に生かされている
例について紹介しています。
第四章
人の感性と手の技、
超精密機械はいまも人の手で
二人の髪の毛を1本づつ
左右の手で持って、
太さの違いを比べると、
指の感触でどちらが太いかを
見分けることが可能なのだそうです。
その差わずか百分の一ミリ。
そのような微妙なちがいの判別こそ、
人間の能力の方が
勝っているという驚きの事実が
記されています。
第五章
知恵と勇気とちょっぴりのお金
非球面レンズと
指の切れないプルトップ缶を作った
現場の知恵こそ、
「熟練工」の技であることを示し、
それらが現場で培われていることを
説明しています。
第六章
あっと驚く工夫のかずかず
機械は自らを改良することがないので、
完全に機械化された工場は
進歩は止まってしまいます。
しかし、道具を使う人の工夫によって、
職人の存在する工場は
進化し続けると断言しています。
第七章
工場の工は”たくみ”
伝統的な技術が失われつつある現代。
それでも新しいものづくりに
挑戦している
現代の「工」たちの存在にふれ、
その希望について語っています。
ひところ、ものづくりは
3K(危険・汚い・きつい)などと揶揄され、
敬遠される節がありました。
もしかしたら、
今でもそうかも知れません。
中学生の普通科志望が高まり、
工業学科の定員削減が続いています。
しかし、本書を読めば、
ものづくりがいかに
夢と希望と誇りに満ちた
職業選択であるかが
実感できるはずです。
文科省の役人に告ぐ、
本書を、ぜひ
全国の中学校図書館に常備せよ。
(2020.4.22)