「絵画で読む聖書」(中丸明)

これはもはや「聖書」というより「性書」

「絵画で読む聖書」(中丸明)
 新潮文庫

「絵画で読む聖書」新潮文庫

宗教と美術に関わる
難しい内容の本かと思いきや、
最初の数ページをめくって、
あまりの面白さに、
ついつい引き込まれるように
読んでしまいました。
内容は簡単にいうと
旧約聖書新約聖書の解説です。

ところがなぜか登場人物の会話が
「カナン弁と称した名古屋弁」で
書かれているのです。
「そーも食いたいきゃあ。
 なんなら食わしたったるがね。
 ふんだけど、
 長男の権利ゆずってくれねゃと、
 だちかんぞ」

東北人の私にとっては
読みにくいこと
この上なかったのですが、
それがこの本の面白さを
引き立てています。

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今日のオススメ!

聖書をしっかりと
読んだことのある日本人は
一体何人いるのでしょうか。
そもそも聖書は
どこで売っているのかすら
私は知りません。

私のような無知な人間でも、
楽しくわかりやすく
聖書に接近できる点が
本書の素晴らしいところです。
私も平均的な日本人です。
お盆には仏壇に手を合わせ、
新年には神棚を拝み、
クリスマスにはツリーを飾る。
ボーダーレスな信仰心の私ですら
(信仰心が薄いだけです)
しっかりと楽しめました。

しかもタイトルとは裏腹に、
内容や表現はお下劣この上ありません。
特に神々が主役の「旧約聖書」は
下ネタ満載です。
そもそも神々は
善悪の区別には厳しいのですが、
下半身は節操がなかったのでしょうか。
不倫しまくり、強姦あり、
近親相姦ありの、
いけないことし放題なのですから。
これはもはや
「聖書」というよりも「性書」です。

したがって、
敬虔なクリスチャンは
読むべきではありません。
あちこちに現れる
神々への冒涜まがいの記述に、
怒り心頭に発すること
間違いなしですから。
また、
絵画を目当てに読んでも失望します。
「絵画で読む」とあるものの、
挿絵としての扱いだけです。
表紙同様の美しい日本語を
期待しても無駄です。
芸術や文芸とは乖離した
「おちゃらけ文章」の洪水です。

中学生はおろか、
高校生にもお薦めできません。
私のような暇な大人
「何か毛色の違った本を
楽しみたい」という向きにお薦めです。
私ははまってしまいましたが。

ブックオフの108円コーナーで
見つけた一冊です。
分厚い本が108円コーナーにあると
つい買ってしまう貧乏性の私。
いつ読むかわからないのに
買ってしまった分厚い文庫本が
もう何冊も書棚にあります。
分厚いがゆえに、
よほどのことがないと
読み始めることができないのですが、
本書は例外でした。
楽しい一冊です。

(2020.6.4)

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