「空の青さをみつめていると」(谷川俊太郎)

読んでも癒やされない詩集

「空の青さをみつめていると」
(谷川俊太郎)角川文庫

谷川俊太郎
私が最も好きな詩人の一人です。
しかし、いつも思います。
谷川は難解な詩を書く詩人です。

私はまど・みちお
阪田寛夫の詩を読むと、
心が落ち着きます。
しかし、谷川の詩を読むときは、
まず心を落ち着かせなければ
読みこなせません。
そして読んだ後は
心がざわざわとかき乱されます。

「あの青い空の
 波の音が聞こえるあたりに
 何かとんでもないおとし物を
 僕はしてきてしまつたらしい
 透明な過去の駅で
 遺失物係の前に立つたら
 僕は余計に悲しくなつてしまつた」
 (「かなしみ」)

もしかして自分も
おとし物をしてるんじゃないか?
それもとんでもない物を!
でも、何を落とした?
あれか?これか?
不安な気持ちにさせられます。

私はまど・みちおや
阪田寛夫の詩に描かれている
自然や風景、
そして人としての
素直な感情の吐露を
味わうのが大好きです。
しかし、谷川の詩に描かれているのは
人間の心の奥底なのでしょう。
それを表す暗号のような言葉を
読み解く必要があります。

「黙っていた方がいいのだ
 一つの言葉の中に
 戦いを見ぬ位なら
 祭りとそして
 死を聞かぬ位なら」
 (「もし言葉が」より)

私はまど・みちおや
阪田寛夫の詩に癒やされます。
しかし、谷川の詩は
心に鋭く斬りかかり、
傷跡を残していきます。

「一人死ぬのはやむをえぬ
 千人死ぬのを防ぐため
 千人死ぬのもやむをえぬ
 一つの国を守るため
 大は小をかねるとさ」
 (「大小」より)

谷川の詩は、
幾たびも私の心に突き刺さり、
瘡蓋がたくさん
できているような気がします。
だから忘れられないのです。
だからまた
詩集を手にしてしまうのです。
読んでも癒やされない
谷川俊太郎の詩集。
中学校3年生に薦めたいと思います。

(2020.7.17)

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