削りが多ければ文章はひきしまる
「文章の書き方」(辰濃和男)岩波新書
中学校教員をしておりますが、
文章を書くことの多い職業です。
などと書けば、
新聞記者やルポライター、
文筆業の方々に、
「なんだそれっぽっち!」と
お叱りを受けそうで
恥ずかしいのですが。
学級担任をしていた頃は、
学級通信を書くことが
しんどくなったときもありました。
いい文章を書きたい、と
どうしても思ってしまい、
ワープロを打つ手が
止まってしまうのです。
そんなときに出会ったのが
本書でした。
かれこれ四半世紀も前でしょうか。
正直にいうと、若いときには
本書に書いてある内容が、
読んでもよくわかりませんでした。
内容は全部で3章、小見出しは
「広場無欲感」「平均遊具品」
「整正新選流」。
よくわかりません。
それもそのはず、本書は
良い文章を書くための
具体的なノウハウを
書いてあるのではないのです。
むしろ心構えを説いているのです。
歳を重ねた現在読み返すと、
「ああなるほど」と
よくわかるのですが、
若い時分は「もっとすぐ
役にたつことを教えて」などと
甘えたことを思ったものでした。
その中で当時から心がけていたのは、
第14章「選ぶ」ということについてです。
正確にいうと「削る」ということです。
「削るという作業には
痛みがともないます。
苦労して取材したものを
捨てるのです。」
そうなのです。
ようやくA4版のスペースを埋めたのに、
それを削るなんて。
でも、「削りが多ければ多いほど、
文章はひきしまってくる」のです。
実際やってみるとその通り。
自分の文章にはこんなにも
余分な部分があったのか、
と驚くばかりです。
それ以来、とにかく最初は
思いつくままたくさん書いて、
そのあとに「削る」作業を
必ず行うようにしています。
だいたい3~4割削ると、
それらしくなってきます。
当ブログの記事も、
A4版のシート(35字×32行=1120字)
1.5枚分位に書き連ね、
その後、削る作業を行って
1枚の分量にしてから
投稿しています。
「大切なのは、
余計な言葉を削って、
単純にすることです。」
「単純化された言葉は
単純化されているからこそ、
人の心に響きます。」
贅肉をそぎ落とした精悍な文章を
書いていきたいものだと感じています。
なお、本書も多くの本から
文章例が引用されています。
巻末のブックリストに示された図書、
25年かかって
いくつ読むことができたやら。
(2020.7.24)