「あさきゆめみし3」(大和和紀)

現代では実現不可能、究極の男の浪漫

「あさきゆめみし3」(大和和紀)
 講談社漫画文庫

源氏から娘を
紫の上の養女とするよう
求められた明石の君は、
悩みながらもそれを受け入れる。
十二歳で元服した
源氏の子・夕霧は、
雲居雁に想いを寄せるが、
離ればなれにされてしまう。
そして玉鬘を巡る男たちの争いは
水面下で…。

さて、
第3巻は「蓬生」から「野分」まで、
源氏28~36歳、紫の上20~28歳、
源氏の息子夕霧7~15歳の時期です。
都へ復活した源氏は、
相変わらずのプレイボーイぶりです。
でも、ただの女好きではありません。
様々な女性のタイプを
網羅しているのです。

第1巻で散々な描かれようだった
醜女の末摘花が、冒頭から再登場。
ここでもやはり散々に描かれています。
でも、彼女を見捨てないあたりが
源氏のキャパシティの大きさでしょう。

ちょっと太めで優しさいっぱいの
花散里も第2巻に続いて登場。
決して美女とは言えないのですが、
男に安らぎを与えてくれる
お母さんタイプです。
この巻では源氏の子・夕霧を預かり
養育します。

第2巻で源氏の子を産んだ、
理知的な女性、明石の君。
現代に生まれていれば「リケジョ」として
活躍していたことでしょう。
子宝にあまり恵まれない源氏ですが、
最愛の正妻・紫の上だけでなく
安産型の花散里にも授けさせず、
理性派の明石の君に
子を授けさせたあたりが、
紫式部の設定の面白さです。

そして第3巻で初登場となるのは玉鬘。
第1巻で生き霊に殺された
夕顔の忘れ形見です。源氏は
玉鬘を娘として引き取るのですが、
男としての思いももちろん表します
(手は出しません)。
玉鬘は源氏よりも14歳年下。
36歳のダンディと22歳の美女なら、
十分つり合いはとれているのですが、
この巻のあたりから
源氏の恋愛は成就しなくなるのです。

もちろん、源氏の正妻で美女の紫の上も
全編にわたって登場します。
そして物語を盛り上げています
(ただ、少女漫画風の描写では、
紫の上も玉鬘も明石の君も、
美女系はほとんど見分けがつきません。
これが漫画の限界か。)

さらに見所は、
源氏の大邸宅・六条院の完成です。
源氏はタイプの違うこれらの女性を
この大邸宅に住まいさせるのです。
ああ、何という贅沢。
これぞ男の夢。
現代ではもはやアラブの王様でない限り
実現不可能となった、
究極の男の浪漫です。

源氏物語原文とは同じ筋書きでも
受ける印象はまったく異なります。
いろいろな源氏物語を楽しめるのは
素晴らしいことです。

(2020.7.25)

Nicolás Borie WilliamsによるPixabayからの画像

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