「学問」(山田詠美)①

いいと思ったものはやっぱりいい

「学問」(山田詠美)新潮文庫

東京から引っ越してきた仁美、
カリスマ的リーダーで
人気者の心太、
医者の息子でグルメの無量、
眠ることが大好きな千穂、
4人は特別な絆で結ばれていた。
仁美は心太に付いて行く
決心をする。
テンちゃんなんか、
死んじゃえ…。

「ええい、かまうものか、
言ってしまおう。
読んでいいと思ったものは
やっぱりいいのだ」と、
この記事を書く前に
心の中で呟きました。
躊躇したのです。
この本を取り上げるべきかどうか。

私は「中学生に薦めたい本」について、
いくつか条件を設定しています。
その一つが「不適切な描写・表現の
少ないもの」です。
日本の小説海外の文学作品と比べ、
性的な表現を含むものが
多いと感じています。
それも不必要なものが。
いくら名作の誉れ高くとも
それでは不適切、という考えで
選定してきました。
その規準を厳格に適用すると、
本書は完全にアウトです。
なにせ少年少女の性への目覚め(特に
少女の方)を描いた作品だからです。

しかし、
読んで心が動かされてしまいます。
再読した今回もまた、
より一層心が揺さぶられました。

山田詠美が描いた本作品は、
「学問(一)~(四)」と名付けられた
4つの章からできています。
それぞれで小学校1年生、小学校5年生、
中学校2年生、高校2年生としての
4人の関係が描かれています。
「学問」というタイトルが表すとおり、
それぞれの段階で
彼女たちは学んでいくのです。
何を学ぶか?「性」です。
本作品は、一人の少女の性の目覚めが
大きな軸となっているのです。

「学問(一)」では、
4人の出会いが描かれます。
その段階ですでに男女の性差を
意識し始める子どもたちの
素直な心情がそこここに見られます。
その正体が何であるかわからないまま、
「性」の入口に立つ
主人公・仁美の姿が鮮烈です。

続く「学問(二)」では、
大人たちの「夜の営み」に、
子どもたちは純粋な知的好奇心から
興味を惹きつけられていきます。
衝撃的なのは、仁美の
「自慰」を学び取る過程が
克明に描写されていることです。
そしてそれがまた、
息をのむような見事な表現なのです。

これまで二度読みましたが、
深い感銘を受けながらも、
私はそれを上手く伝える言葉を
見つけ出せませんでした。
説明できなくとも、
いいものはやっぱりいいのです。
中学校3年生に、
思い切って薦めてしまいます。

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