「白蠟仮面」(横溝正史)

ふんだんに盛り込まれた事件・冒険・対決・逃走・大活劇

「白蠟仮面」(横溝正史)
(「横溝正史少年小説
  コレクション⑤白蠟仮面」)柏書房

「白蠟仮面」(横溝正史)角川文庫

怪しげな石膏像を積んだ
トラックの荷からこぼれ落ちた
一粒のダイヤモンド。
それを拾い上げた御子柴少年は
トラックを追跡する。
たどり着いた屋敷を覗くと、
なんと石膏像が動き出した。
その正体は神出鬼没の怪盗・
白蠟仮面だった…。

横溝正史ジュヴナイルシリーズ
以前取り上げた「怪獣男爵」同様、
いくつかの作品に登場するのが
この白蠟仮面です。
変装の名人であり、
老若男女どんな人物にも
変装してしまうという
悪役キャラクターです。
発表されたのは1954年。
ちょうど乱歩が年一本の
少年探偵団の雑誌連載を、
三つの雑誌に並行して掲載し、
量産期に入った頃です。
二十面相の人気の
絶頂期に書かれた本作品、
当時パクリと言われなかったのかどうか
いささか心配になるくらいです。

本作品の読みどころ①
一柳老人邸少女催眠操作事件

変装術を駆使して
邸内深くに侵入できる力がありながら、
老人の孫娘・由紀子を
催眠術で遠隔操作して宝石を隠し、
後日奪い取る。なんとも
回りくどい手段を選ぶ白蠟仮面。
そのために御子柴少年は
監禁されて片棒を担ぎ、
事件に見事に巻き込まれるのです。

本作品の読みどころ②
一柳老人別邸監禁事件

白蠟仮面の仕返しを恐れた
一柳老人・由紀子・御子柴の三人は、
人里離れた老人の別荘へと避難します。
よく考えると、老人と子ども二人が
警察の手の及ばないような
土地へ行くのはかえって
危険ではないかと思うのですが、
だからこそ事件が起きるのです。
しかもその別荘には
所有者すら知らない
秘密の抜け道があり、
さらには町のサーカスから
ライオンが脱走し、
何が起きても不思議でない状況に
陥るのです。

本作品の読みどころ③
アラブの王子宝石強奪事件

アラブの王子が
身につけていたダイヤは、
百蠟仮面の持っていたものと
対になっていました。
百蠟仮面がそれを
盗み取ろうとするのも必然なら、
アラブの王子が油断しまくるのも当然、
さらには三津木俊助が
罠を仕掛けるのも当たり前。
かくして事件は起こるのです。

本作品の読みどころ④
上野動物園人質交換事件

アラブの王子事件で御子柴少年は
白蠟仮面の囚われの身となります。
白蠟仮面は逮捕された部下との
人質交換を持ちかけます。
場所は上野動物園。
いかにも事件が起きそうな予感です。

と、150頁あまりに
ふんだんに盛り込まれた
事件・冒険・対決・逃走・大活劇。
ありとあらゆるものを詰め込んだ、
横溝ジュヴナイルの傑作。
大人になった今読むと、
面白さもひとしおです。

(2020.8.9)

SamWilliamsPhotoによるPixabayからの画像

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