「魔法博士」(江戸川乱歩)

では、本作品の魔法博士の正体は?もちろん

「魔法博士」(江戸川乱歩)ポプラ社

「魔法博士」(江戸川乱歩)
(「江戸川乱歩全集第19巻」)
 光文社文庫

少年探偵団員の
井上・野呂の二少年は、
移動映画館を営む
怪しい老人の後を追い、
囚われの身となる。
二人が連行されたのは悪魔の国。
怪老人の正体は魔法博士、
そして黄金怪人だった。
二少年に続き、
団長・小林少年まで
捕らえられ…。

江戸川乱歩少年探偵団シリーズ
第14作目となる本作品も、
読みどころ満載です。
乱歩はこの時期、
年3本の少年探偵団シリーズを執筆し、
量産体制に入っていました。

本作品の読みどころ①
久しぶりの犯罪予告

今回の悪役である
魔法博士・黄金怪人は
「グーテンベルクの聖書」という
お宝を盗み出します。
それも犯行予告付きで。
このところ
「大がかりないたずら」的犯行しか
登場しなかった
少年探偵団シリーズでしたが、
久々の犯行予告の上での
お宝盗難事件発生です。

しかし手口はこれまで同様、
「すでに盗まれている」と言われて
動揺した持ち主が金庫を開けてからの
せこい手口での強奪です。
まあ、金庫に入れられてしまえば
それ以外には手段はありませんので
仕方のないところです(だから
ここ数作品は盗難事件が
発生していなかったのですが)。

本作品の読みどころ②
例によっての替え玉合戦

今回は捕らえられた二少年の替え玉が
魔法博士の手先となって
悪事を働くという
新しいパターンの登場です。
魔法博士曰く「よく似た少年たちを
探してきた」というのですが、
そんな子どもたちを
どうやって手下にしたのか?
アジトに隔離して
じっくり犯罪学を仕込んだのか?
本作品の最もあくどい犯行は
まさにこの一点でしょう。

それはさておき、小林少年の替え玉、
明智小五郎の替え玉、
黄金怪人の偽物、多々登場します。
この替え玉合戦ともいえる状況が
読みどころの一つでしょう。

本作品の読みどころ③
三たび現れた魔法博士の正体

少年探偵団の前に
幾度となく現れる魔法博士。
一度目は「地底の魔術王」事件、
正体は二十面相。
二度目は「黄金の虎」事件、
こちらの正体は雲井良太という
「お金持ちの変わり者」で
明智とは旧知の仲。
本作品は実は三度目。
四度目五度目は「まほうやしき」
「赤いカブトムシ」の両事件、
こちらも正体は雲井良太。
では、本作品の魔法博士の正体は?
もちろん二十面相です。

以前書きましたが、
雲井魔法博士のやっていることも
ほとんど二十面相と同じです。
今更その正体は
どちらでも良さそうなものですが、
とにかく二十面相です。

いっそ「黄金怪人」としても
よかったのでしょうが、
大人向け作品の「黄金仮面」との
混同を恐れたのでしょうか。
難しいことを考えずにしっかり
作品を楽しみましょう。

(2020.8.16)

【青空文庫】
「魔法博士」(江戸川乱歩)

Lothar DieterichによるPixabayからの画像

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