「赤頭巾ちゃん」(ペロー)

少女を救出する猟師は絶対に必要なのです

「赤頭巾ちゃん」(ペロー/村松潔訳)
(「眠れる森の美女」)新潮文庫

村一番のかわいい女の子・
赤頭巾ちゃんが
お祖母さんに届け物をするために
歩いていると、狼と出会う。
狼の問いに
素直に答えた赤頭巾ちゃん。
狼は先回りして
お祖母ちゃんを食べ、
待ち伏せし、赤頭巾ちゃんをも
平らげてしまう…。

そんなばかな!
赤頭巾ちゃんが狼に食べられて
おしまいだなんて!
ペローの童話集、
読んでみたら衝撃が大きすぎました。
私が知っている赤頭巾ちゃんの物語は、
おばあさん、赤頭巾ちゃんが
食べられた後、猟師が狼のお腹から
二人を救出するというものです。
それが食べられて物語が
終わっていたなんて。

もともと、「赤頭巾ちゃん」の話は、
本書の著者ペローの
オリジナルの創作ではなく、
ヨーロッパの民話を
下敷きにしたペローの創作です。
したがって、本当の筋書きは
どんなものであるかは
定かでないのです。

調べてみると、狼のお腹から
二人を救出するエピソードは、
グリム兄弟が
考え出したものらしいのです。
私はまだグリム童話の本は
読んでいませんので、
未確認なのですが。

さらに調べてみると、
もともとの口承民話は
もっとグロテスクなのだとか。
おばあさんの家にいた狼は、
なんと訪ねてきた赤頭巾ちゃんに、
おばあさんの血をワインとして
飲ませたというシーンがあるとか。

1628年生まれのペローは、
そんな残酷な部分もある民話を、
それなりにフィルターにかけて
再構成したのです。
えげつない終わり方!と批難するのは
筋違いなのかも知れません。

でも、食べられておしまいの物語が、
何故「童話」たり得るのか?
それぞれの童話の終末に、
ペローは「教訓」なるものを
添付しています。
本編の「教訓」は…。
「年端も行かないこどもたち、
 とりわけ、きれいで、
 スタイルもよく、
 やさしい少女たちが
 どんな種類の人にでも耳を貸すのは
 とてもよくないことであり、
 狼に食べられてしまう少女たちが
 こんなにもたくさんいるのも、
 不思議では
 ないということでしょう。」

本作品が書かれた17世紀も、
狼に食べられてしまう少女が
たくさんいたのでしょう。
人権や男女平等の観念の
きわめて薄い時代でしたでしょうから、
なおさらだと思います。

21世紀を注視しても、
やはりこの教訓は
色褪せずに役立ちそうです。
いや、現代の方がむしろ、この教訓を
必要としているような気がします。
昨今の狼はスマホやネットを介しての
巧妙な獣になり果てていますので、
より警戒が必要です。

いや、そんな世の中が
まかり通ってはいけません。
狼退治は、やっぱり大人の責任です。
少女を救出する猟師は
絶対に必要なのです。

(2020.8.24)

ComfreakによるPixabayからの画像

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