「犯人」(太宰治)
太宰の心の闇がしっかりと刻み込まれている 「犯人」(太宰治)(「津軽通信」) 新潮文庫 「一緒に帰れるお家があったら、幸福ね」という森ちゃんからの言葉を受け、鶴は二階の部屋を借りられるよう姉の嫁ぎ先を訪ねる。しかし姉から...
太宰の心の闇がしっかりと刻み込まれている 「犯人」(太宰治)(「津軽通信」) 新潮文庫 「一緒に帰れるお家があったら、幸福ね」という森ちゃんからの言葉を受け、鶴は二階の部屋を借りられるよう姉の嫁ぎ先を訪ねる。しかし姉から...
犯罪者の異常心理についての詳細な分析 「或る罪の動機」(谷崎潤一郎)(「潤一郎ラビリンスⅧ 犯罪小説集」) 中公文庫 博士を殺害したのは書生の中村だった。彼は善良な青年であり、博士に恨みはなかった。彼は動機を滔々と語る。...
犯罪小説でありながらも、超一級の純文学作品 「剃刀」(志賀直哉)(「清兵衛と瓢簞・網走まで」)新潮文庫 職人・芳三郎は熱があり、剃刀研磨の急ぎの仕事が思うように進まない。今また不意の来客を迎える。震える手。垂れる水洟。切...
現れた顔が誰のものかが本作品の読みどころ 「蠟の首」(横溝正史)(「横溝正史ミステリ 短篇コレクション③」)柏書房 「蠟の首」(横溝正史)(「消すな蠟燭」)出版芸術社 「蠟の首」(横溝正史)(「刺青された男」)角川文庫...
怪しい人間だらけの中で事件が進行 「蠟美人」(横溝正史)(「首」)角川文庫 「蠟美人」(横溝正史)(「花園の悪魔」)角川文庫 法医学界の異端・畔柳博士は、白骨死体から蝋で肉付けをする「復顔術」を行うとマスコミに発表、セン...
柏木・女三の宮の密通と源氏の痛手 「源氏物語 柏木」(紫式部)(阿部秋生校訂)小学館 衰弱の一途をたどる病床の柏木は、死を覚悟した歌を女三の宮と交わす。その夕刻、女三の宮は産気づき、翌朝に運命の子・薫を産む。内心喜ぶこと...
障碍を持つものへの「祈り」 「静かな生活」(大江健三郎) 講談社文芸文庫 精神に危機を感じて渡米を決意した父に母が同行したため、「私」と兄のイーヨー、弟のオーちゃんは家に取り残された。兄は脳に障碍を持ち、弟は大学受験を控...
みな純真で奥ゆかしい 「八重山の雪」(宇野千代)(「百年文庫096 純」)ポプラ社 信吉への嫁入りが決まった「私」は、正式な夫婦になるまでの半年間、彼の家に住み、酒屋の手伝いをしていた。ある日、英国の若い海兵・ジョージが...
「いつか世界は一つになる」という理想 「新版 国際機関ってどんなところ」(原康)岩波ジュニア新書 近年、新聞やテレビのニュースには、国際機関の略称が次から次へと登場し、戸惑うことが多くなってきました。「韓国が日本をWTO...
悲しい時代の悲しい成長物語 「兵隊宿」(竹西寛子) 講談社文芸文庫 ひさしの家は三人の将校たちの兵隊宿を割り当てられる。一週間滞在した将校たちは、その四日目、神社への参拝にひさしを連れて行きたいと母親に申し出る。「迷惑」...