中学校1年生に薦めたい本100冊vol.8 11月

大人への第一歩を踏み出そう!~世の中を知る新書本

大人になるってどんなことだろう?
毎年の各地の
成人式のニュースを見るたび、
考えてしまいます。
何をしても許されると思い込んでいる
一部の嘆かわしい新成人のおかげで、
厳粛に大人になる機会を
うばわれている多くの若者が
いるのではないかと心配になるのです。
子どもたちにはぜひ、
大人になるということがどんなことか、
しっかりと考えて
成人式を迎えて欲しいと
切に願っています。

さて、成人式でいきなり
成人になるのではありません。
その日に向けて、
少しずつ成長していくものなのです。
中学生の子どもたちに、
大人への成長を意識するための8冊を
岩波ジュニア新書から
セレクトしてみました。

その1
「思春期ってなんだろう」(金子由美子)

思春期特有の子どもの心の揺れを
的確に捉え、解説しています。
それもありがちな例だけではなく、
ネットにかかわる
子どもたちの世界の変化といった
最新事情や、
性的マイノリティといった
これまで少なかった事例についても
取り上げているのです。
筆者の幅広い経験と活動に
裏打ちされた内容です。
一人で悩んでいる子どもたちが
たどりついてほしい一冊だと思います。

その2
「「空気」を読んでも従わない」
(鴻上尚史)

著者はまず「世間」と「社会」の違いを
明確に説明しています。
そして「世間」は日本特有の
考え方であること、
明治の時代に国が「世間」を
壊そうと試みたものの、
壊れかかりながらも現在まで
しぶとく「世間」は残っていること、
この国の「生きにくさ」の正体は
この「世間」と関わりがあることを、
一つ一つ丁寧に紐解いています。

その3
「大人になるっておもしろい?」
(清水真砂子)

みんなと同じである必要はない、
一人一人はみなちがうのだということ。
このよく言われていることを、
これほどまで明確に解説した本に
これまで出会ったことは
ありませんでした。
あとがきの中で、著者は
書名にもなっている問いに答えます。
「大人になるっておもしろい?
 うん、だんぜん!!」

その4
「働くって何だ 30のアドバイス」(森清)

「働く」とは何か。
実際に働いてみないことには
わかりません。いや、
実際に働いている大人にとっても
難しい問いです。
だからこそ、未来の職業人である
中学生高校生の子どもたちには、
ぜひいろいろな本を読んで、
「働く」とは何か、
考えて欲しいと思うのです。
その点、本書はキャリア学習のための
参考書といえる内容です。

その5
「みんなでつくるバリアフリー」
(光野有次)

本書は単なるバリアフリーの
考え方の解説書ではありません。
筆者自らが動いて取り組んできた、
人権保障の実現への
活動記録といえます。
すくいやすい食器の開発に始まり、
障害者用の自動車の設計への提案、
バリアフリー団地実現への助言、
数々の障害者支援活動、…。
まさに「バリア」と戦う筆者の姿が
克明に記録されています。

その6
「地元学をはじめよう」(吉本哲郎)

「ふるさと教育」の現状を考えたとき、
本書には改善のためのヒントが
たくさん詰まっていると考えます。
一つは「ないものねだり」ではなく
「あるもの探し」という視点です。
一つは「土の地元学」と「風の地元学」の
組み合わせという視点です。
そして一つは「発表すること」が
大切であるという視点です。

その7
「政治参加で未来をまもろう」(首藤信彦)

社会の教科書には、
政治や国会の制度や
システムについての記述は豊富ですが、
若者が政治に参加する
「意義」や「価値」、
そしてそのための
「手段」や「方法」については
全く記されてはいないのです。
これで若者に
「政治にもっと関心を持て」
などと言っても始まりません。
本書はそうした
今まで気づかなかった問題に
気づかせてくれます。

その8
「中高生のための憲法教室」(伊藤真)

本書は憲法について考えるための
第一歩となる一冊です。
私たちが生活する中で
生じる疑問について、
憲法を基準に考え、
読者とともに何が正しいのかを
追求するというスタンスで
書き進められているからです。
そして、
本書はこうした知の探求を、
7時限の授業に見立てて
構成しています。

中学校1年生に
この8冊を薦めたいと思います。
そして中学校1年生の段階から、
大人になる準備を
少しずつして欲しいと思うのです。
中学校1年生の子どもを持つ
大人のみなさん、
まずは読んでみませんか。

(2020.9.6)

PezibearによるPixabayからの画像

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