続けて読めば、菜穂と亜矢の成長がよくわかります
「群青の空に薄荷の匂い」(石井睦美)
ピュアフル文庫
高校1年生の亜矢は、
親友の菜穂と
寄り道を楽しんだりして
「平和な学校生活」を送っていた。
ある日、いつもの散歩道で
小学校時代の同級生・
安藤くんに出会う。
ぐっと背も伸びた
安藤くんとの距離も縮まり、
心ときめく亜矢だったが…。
小説の続編が気になりませんか?
私は気になる方です。
自分が好きになった登場人物が、
その後どのような変容を経て
再登場するのか、興味津々です。
映画に関しては
「○○○○2」とつくものに
ろくなものはないのですが、
小説は続編がなかなかいい味を
出してるものが多いのです。
本書は以前取り上げた
「卵と小麦粉それからマドレーヌ」の
続編です。
物語は前書の3年後、
菜穂と亜矢が高校1年生に
進学したところから始まっています。
本作品も続編として
味わいのある作品世界を
創り出しています。
それは前作の菜穂から主役が交代し、
亜矢が主人公だからです。
前作では、
菜穂のママが留学のために
パリへ行くことから
物語が盛り上がりました。
でも菜穂一家は、
一家円満で幸せなのです。
一方、
菜穂を精神的に支える亜矢の家では
両親が離婚、パパが不在の上、
亜矢とママの中が
うまくいっていなかったのです。
さらに亜矢自身、
小学校時代のいじめられた経験を
引きずっていました。
亜矢が救われていない…。
それが大きく私の心に
引っかかっていました。
本書は、このあたりに
一つの決着を与えています。
両親は離婚したままなのですが、
亜矢はそのことに
折り合いをつけることが
出来るまでに成長しています。
また、安藤くんとの恋愛から、
いじめのトラウマを
乗り越える姿も描かれています。
前作同様、大きな事件が
起こるわけではありません。
淡々とした日常の、
ちょっとした出来事を
取り上げているだけです。
でも、だからこそ、
これを読んだ子どもたちは、
亜矢や菜穂を自分自身と
重ね合わせて考えることが
できるのだと思うのです。
歳をとった私の勝手な推測に
過ぎないのではありますが。
本書も明るく終わります。
暗さはありません。
したり顔の大人の目線も
登場しません。
「卵と小麦粉それからマドレーヌ」同様、
100%の「生徒文学」です。
「卵と小麦粉それからマドレーヌ」を
読んでから
「群青の空に薄荷の匂い」を読む。
それによって菜穂と亜矢の成長が
実によくわかるしくみになっています。
中高生の女子のみなさんに
お薦めします。
(2020.9.11)