中学校2年生に薦めたい本100冊vol.9 12月

ニッポン語のいろいろなカタチ~詩・短歌・俳句

日本語には
いろいろなカタチがあります。
その中で最も洗練されていて、
最も日本語としての特徴を
体現しているのが
詩・短歌・俳句の形態だと考えます。
以前、中学校1年生向けの
詩集の入門編8冊を紹介しました。
そこから一歩進んで、
やや難解な詩、そして短歌・俳句を
取り上げてみました。

その1
「倚りかからず」(茨木のり子)

哀しみの日々
それはひとを少しは
深くするだろう
わずか五ミリぐらいでは
あろうけれど」
(苦しみの日々 哀しみの日々)
心が折れそうになったとき、
いつも手にとって読んでいる一冊です。
優しく背中を押してくれるような
詩集ではありません。
横っ面を激しくビンタするような
作品ばかりです。

その2
「空の青さをみつめていると」
(谷川俊太郎)

私が最も好きな詩人の一人です。
しかし、いつも思います。
谷川は難解な詩を書く詩人です。
私はまど・みちおや
阪田寛夫の詩を読むと、
心が落ち着きます。
しかし、谷川の詩を読むときは、
まず心を落ち着かせなければ
読みこなせません。
そして読んだ後は
心がざわざわとかき乱されます。

その3
「汚れつちまつた悲しみに…」
(中原中也)

私は(たしか)中学2年生のころ、
この「汚れつちまつた悲しみに」の
詩に出会い、
さらには大学生のころ、
文庫本の「中原中也詩集」を
愛読書としていました。
そのときには確かに中也の詩に
親近感を抱いていました。
もしかしたら、若い世代の方が、
今の五十代の私よりも
彼の詩に共感できるのかも知れません。

その4:
「空が青いから白をえらんだのです」
(寮美千子編)

これはただの詩集ではありません。
奈良少年刑務所での
少年少女の更生の過程で創られた詩を
集めたものです。
人生の中で最も多感な時期である
中学校3年生に、
ぜひ手にとってほしい一冊です。
この詩集に接して、
こうした重荷を背負っている
同世代の子どもたちに、
温かい視線を持つことが出来ればと
思います。

その5
「寺山修司青春歌集」(寺山修司)

この寺山修司は、10数年前、
角川文庫できれいな女性の写真で
装幀された文庫本シリーズが
復刊した関係で、
その頃からよく読んでいました。
こういう歌なら、
若い世代が親しめる可能性が
高いのではないかと思うのです。
短歌なぞには
なかなか見向きもしないであろう
中学生高校生に、
ぜひ薦めたいと思います。

その6
「サラダ記念日」(俵万智)

一大ブームとなった
俵万智のサラダ記念日。
当時私はまだ大学生でした。
流行に乗っかって
ハードカバーの本をすぐに買いました。
あれからもう
30年以上経っていたとは…。
私にとってはいまだに
目新しさを失っていない本歌集ですが、
今の中高生は
どのようにとらえるのでしょうか。
中学校2年生あたりに
お薦めしたい一冊です。

その7
「名俳句一〇〇〇」(佐川和夫編)

「イギリスに滞在したことのある知人が、
日本の俳句について
現地の学生から説明をせまられ、
冷や汗を流した」という話を
何かの本で読んだことがあります。
日本人として生まれてきたのであれば、
俳句について
少しでも理解しておくべきでしょう。
中学生そして
高校生に薦めたい一冊です。

その8
「山頭火句集〈1〉」(種田山頭火)

私は若い時分、
山頭火の生き方に羨望を覚えながら、
そうした生き方をする
勇気も技量もなく、
今に至っています。
何よりも家族と離れるのがいやです。
だから単身赴任を避けて
今まで勤務してきました。
放浪など到底できそうにありません。
身軽になれ、と山頭火に
諭されているような気がしています。

1~3はいつまでも味わっていたい
偉大な詩人3人の作品集。
4は素人の詩にも
凝縮された思いがあるということが
しっかりと理解できる一冊。
5、6は現代の歌人。
明治・大正期の歌人の作品は、
高校生になってからで十分でしょう。
7、8は俳句集。
7は風景画の展覧会のような句集。
日本の俳句の全貌を
俯瞰するのに適した一冊です。
8の山頭火は、ぜひ若い人たちにも
接してほしい俳人です。

なかなか手にすることのない
詩・短歌・俳句。
子どもたちだけでなく、
大人の貴方にもお薦めします。

(2020.9.13)

Thought CatalogによるPixabayからの画像

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