学校図書館はもはや静的な場所ではない
「みんなでつくろう学校図書館」
(成田康子)岩波ジュニア新書
えっ、学校図書館をつくるのは、
司書の先生や
図書委員じゃないの?という驚きが
聞こえてきそうなタイトルです。
しかし、読み進めると、
「学校図書館って、
こんなにも発展する可能性のある
場所だったんだ」と
誰もが納得できる内容です。
それもそのはず。
著者はその道30年のベテラン学校司書。
高校の学校図書館を
劇的に活性化させたようすが
綴られています。
第1章
学校図書館を居心地よい場所に
「本を読まなくてもいいんだ」
「囲碁、将棋コーナーをつくる」
「禁止は禁止!」など、
刺激的な小見出しが続きます。
元来、学校図書館は、
1に本を読むところ、
2に静かに自習するところ、という
イメージが定着しています。
目的外利用は御法度のような
不文律が存在している空間です。
そんな既成概念を覆すような提案が
いくつも登場します。
第2章
図書館を自分たちの居場所にする
第3章
図書館を舞台に何かが起きる
図書館オリエンテーション、
手作りポップ、手作り栞、
ディスプレイ、イベント企画、等々、
図書館をアクティブにする方法が
これでもかと提示されます。
学校図書館はもはや静的な場所ではなく、
激しいアクションのある
魅力的な空間となり得るのです。
第4章
学校図書館をみんなでつくろう
「人がたくさんいる
図書館にしたい」という著者の願いが、
最後にまとめられています。
こうして読み終えると、
図書を受動的に扱っている
学校図書館は時代遅れであり、
学校図書館自体が能動的・積極的に
表現し、行動し、発信していく必要が
あるということを思い知らされます。
蔵書を単に揃え、
陳列するだけでなく、
紙に記録されている情報を、
さまざまな様式や媒体で
主体的に提示する。
子どもたちの
内的な学習意欲を掘り起こし、
本当に必要としている
情報・空間・人的繋がりを提供する。
新しい時代の学校図書館の姿が、
本書に溢れています。
中学生高校生の、
図書委員を含むすべての子どもたちに
薦めたい一冊です。
子どもたちの力で、
学校図書館がさらに魅力あるものに
変容していくことを
期待したいと思います。
※学校図書館。
高校の図書館は小中学校と比較して
資金が潤沢(それでも
少ないのですが)なので、
比較的整備されています。
小学校の図書館も、
予算を児童書に
シフトすることにより、
本好きの子どもたちが
集まるようになりました。
問題は中学校の図書館です。
単なる本置き場にしか
なっていなかったり、
会議室や面談室として
使われていたり、
最悪の場合は物置と
化している場合も…。
(2020.10.9)