「灰神楽」(江戸川乱歩)
乱歩の「妙な味」のない本格作品 「灰神楽」(江戸川乱歩)(「江戸川乱歩全集第3巻」)光文社文庫 机上にあった拳銃で、ものの弾みで一郎を殺害してしまった庄太郎。一郎は彼のパトロンであったが、片意地の悪い性格でいつも彼を困ら...
乱歩の「妙な味」のない本格作品 「灰神楽」(江戸川乱歩)(「江戸川乱歩全集第3巻」)光文社文庫 机上にあった拳銃で、ものの弾みで一郎を殺害してしまった庄太郎。一郎は彼のパトロンであったが、片意地の悪い性格でいつも彼を困ら...
意外な犯人、単純な手口 「堀越捜査一課長殿」(江戸川乱歩)(「江戸川乱歩全集第20巻」) 光文社文庫 警視庁捜査一課長・堀越貞三郎は、ある日、非常に分厚い封書を受け取った。書簡箋七八十枚ほどに及ぶそれを、一通り読み通した...
二十面相は昭和の時代のユーチューバー 「江戸川乱歩全集第16巻 透明怪人」(江戸川乱歩)光文社文庫 蝋人形のような仮面を被った怪紳士は、尾行してきた少年探偵団員二人の目の前でシャツを脱ぎ始める。何とそこには何もなく、怪紳...
実の母が期せずして創った娘・浮舟の悲劇の入り口 「源氏物語 東屋」(紫式部)(阿部秋生校訂)小学館 浮舟の婚約者の少将は、彼女が継娘と知るや破談にし、結婚相手を常陸守の実子の次女へと乗りかえる。憤然とした母・中将の君は、...
主役は中の君、匂宮・薫を圧倒。 「源氏物語 宿木」(紫式部)(阿部秋生校訂)小学館 女二の宮を薫に降嫁したいという帝の願いを知り、夕霧は娘・六の君の婿選定を薫から匂宮へと切り替える。母中宮の気持ちをくみ、匂宮は結婚を承諾...
トンネルの向こうに見え始めたあかり 「斉唱」(原田マハ)(「星がひとつほしいとの祈り」) 実業之日本社文庫 心を閉ざしてしまった14歳の娘・唯に「旅行するからついてきて」と誘われた先は佐渡島。体験学習の受け入れ先の一家は...
鷗外が何を言いたいのかよくわからないでいる 「山椒大夫」(森鷗外)(「森鷗外全集5」)ちくま文庫 「山椒大夫」(森鷗外)(「山椒大夫・高瀬舟」)新潮文庫 父親を訪ねての旅の途中に、一家は人買いに騙され、幼い安寿と厨子王の...
天然フェロモン人間vs人工フェロモン使い 「寂聴訳 源氏物語 巻八」(紫式部/瀬戸内寂聴訳)講談社文庫 源氏の没後、後継者は匂宮と薫の二人と目されていた。二人の娘とともに宇治に隠遁していた源氏の異母弟・八の宮の噂を聞いた...
本作品こそが究極の純粋な恋愛小説 「亡き妻フィービー」(ドライサー/河野一郎訳)(「百年文庫066 崖」)ポプラ社 48年間連れ添った妻・フィービーを病で亡くしたヘンリーは、ある晩、月明かりの中に妻の幻を見る。以来彼は毎...
「時をかける少女」と同様、女の子が主人公 「悪夢の真相」「果てしなき多元宇宙」(筒井康隆)(「時をかける少女」) 角川文庫 昌子は般若の面と高いところに対して異常な恐怖心を持っていた。その原因はどうやら忘れ去った過去にあ...