死と再生にかかわる「大人の童話」
「コンビニたそがれ堂 奇跡の招待状」
(村山早紀)ポプラ文庫ピュアフル
大事な探しものがある人だけが
たどり着ける、
不思議なコンビニたそがれ堂。
大好きな雪の友だちに会いたいと
願う10歳のさゆき、
あるきっかけから
引きこもりとなった17歳の真衣、
学生時代の恋を思い出した
作家・薫子が訪れる…。
50を過ぎたおじさんが
読むものではないかも知れません。
でも、こういう泣けてくる本が
大好きです。
「コンビニたそがれ堂」シリーズ第2弾。
物語はシリーズ化すると
質の低下が起こりがちですが、
本作品は決してそうではありません。
友だちになじめず、
継母に不安を抱いていた
引っ込み思案の小学生・さゆきは、
コンビニたそがれ堂で
「魔法のはがき」を購入する。
そして自分がつくって残してきた
雪だるま・雪うさぎに手紙を書く。
その手紙は
雪だるま・雪うさぎを…。
第1話「雪うさぎの旅」
引きこもってゲームに
明け暮れている真衣は、
勇気を出して部屋から出て、
コンビニたそがれ堂に辿り着く。
そこで買った「魔法の招待状」を、
事故で亡くなった
従姉であり親友の
秋姫宛てに送る。
折しもその日は
秋姫の誕生日で…。
第2話「人魚姫」
薫子は10年前の約束を思い出す。
旅に出たまま音信不通となった
恋人・薫との約束を。
立ち寄ったコンビニたそがれ堂で
彼女は「魔法の振り子」を買う。
数日後、
十年前に薫から預かった荷物を
返したいという手紙が
ホテルから届き…。
第3話「魔法の振り子」
すべて死と再生にかかわる物語です。
雪だるま・雪うさぎは
旅の果てに融けて命を失いますが、
さゆきは不安を乗り越え、
笑顔で生活できるようになりました。
亡くなった秋姫は、
真衣の出した招待状によって
ハロウィンの一夜だけ甦りますが、
真衣もまた引きこもりから脱出します。
薫子は薫の死を
現実として受け入れると共に、
ゴーストとしてやってきた彼をも
明るく受け入れます。
継母と少女の関係、
不登校から引きこもり、
10年間引きずった彼の死の予感、
いずれも重いテーマです。
それを、童話のような語り口の文体と、
コンビニたそがれ堂の温かな「魔法」が、
オブラートのように包み込んでいます。
前作同様、
涙のツボがいたるところで刺激され、
涙腺は緩みっぱなしでした。
コンビニたそがれ堂そのものは、
今回は脇役に徹している感があります。
各話とも前作5篇に比べて
ページ数が増えているため、
登場場面が相対的に
少なくなってしまったからです。
しかしその分、重い筋書きに対して
絶妙のスパイスとなっているのです。
まさに現代の「大人の童話」。
中学生にも高校生にも
大人のあなたにも
お薦めしたい一冊です。
※最近表紙が改訂され、
ラノベ風になってしまいました。
この早川司寿乃のイラストが
しっくりくるのですが。
残念です。
(2020.11.13)