どうした二十面相?
「魔人ゴング」(江戸川乱歩)ポプラ社
「妖人ゴング」(江戸川乱歩)
(「江戸川乱歩全集第20巻」)
光文社文庫
「ウワン、ウワン、ウワン…」という
不気味な音とともに現れる
巨大な魔人の顔。
不思議な力を持つ魔人ゴングは、
花崎検事の娘・マユミと
その弟・俊一の誘拐を企てる。
マユミの叔父でもある
明智小五郎、そして少年探偵団が
立ち上がる…。
少年探偵団シリーズの
一作である本作品、
魔人ゴングというキャラクターが
登場しますが、
もちろん正体は二十面相です。
さて、今回の二十面相は
どんな悪さをするのやら。
今回の二十面相のする悪さ①
誘拐、「盗み」はしないの?
今回はマユミと俊一の
誘拐のみを画策します。
わざわざ予告までする
念の入りようなのですが、
「盗み」は一切しません。
美術品も登場しません。
いつのころからか美術品収集を
止めてしまった二十面相。
「黄金豹」事件で一度原点回帰して
「盗み」を再開しましたが、
それもつかの間、
また「誘拐」と「迷惑行為」の連続です。
どうした二十面相?
ただし今回の
ゴングなるキャラクターは、
単なる二十面相の変装の一環だけで、
「宇宙怪人」でのトカゲ型宇宙人や
「海底の魔術師」での
鉄の人魚や巨大お化けガニといった
着ぐるみの類は登場しません。
はなはだ簡単です。
それ以外の仕掛けも
幻灯の原理で煙に魔人の顔を
大写しにするだけの簡単作業。
悪ふざけが目的としか
思えない所業です。
どうした二十面相?
今回の二十面相のする悪さ②
殺人未遂、性格が変わった?
これまで殺人はしなかった
二十面相ですが、
今回は「殺人未遂」を犯してしまいます。
マユミと思って誘拐したら
正体は小林少年。
またもや同じ手口に引っかかる
二十面相ですが、今回は
堪忍袋の緒が切れたのでしょうか、
小林少年に麻酔剤を注射し、
三角柱型の鉄製の密閉容器に閉じ込め、
隅田川に流してしまうのです。
すんでのところで一般人に発見され、
助けられたのですが、
運が悪ければ窒息死していたはずです。
今回の行為は残忍この上ありません。
どうした二十面相?
今回の二十面相のする悪さ③
諦めずに誘拐、その先どうするの?
これまでは逃した獲物を
未練がましく再度狙うことは
ありませんでした。
ところが今回はマユミと俊一を
執拗に狙います。
理由はかつて花崎検事に
監獄送りにされたからという
全くの逆恨み。
でも誘拐してその先
どうするつもりだったのでしょうか。
営利目的でもなく
殺害もしないはずだろうし、
後先考えず「まず誘拐」という
短絡的な思考でしょうか。
これは一体、どうした二十面相?
というわけで、
らしからぬ面が多々ある
今回の二十面相です。
しまいには明智の罠にかかり、
防空壕跡に閉じ込められ、
水攻めにされる始末です。
まあ、こんな時も
あっていいのかも知れませんが、
どうしてもつぶやいてしまいます。
どうした二十面相?
(2020.12.30)
【青空文庫】
「妖人ゴング」(江戸川乱歩)