21世紀末の日本語はこうなっている
「曲り角の日本語」(水谷静夫)
岩波新書
私がいちいち指摘するまでもなく、
私たちの身のまわりには
変な日本語が溢れてきています。
20年ほど前には
いわゆる「ら抜き言葉」などが
日本語の乱れとして云々されましたが、
昨今では「過剰な敬語」でしょうか。
レストラン等でよく聞く
「○○でよろしかったでしょうか」などと
いう言い方は、
それに対して文句を言うことも
できない以上、やがて定着
(もう定着?)していくのでしょう。
さて、世の中に
日本語論はたくさんあります。
乱れた日本語を指摘する本も
数多く存在します。
その中で本書の特徴は、
日本語の変化を
科学的に分析している点と
言えるでしょう。
「第一章 辞典になぜ改訂が必要か」
ここでは日本語の移ろいについて、
さまざまな例を挙げ、
それらの語源を指摘しながら
なぜそのような変化が生じたのかを
ひもときます。
「第二章 日本語が曲がり角に、今?」
現在生じている日本語の変化として、
「七五調の乱れ」
「敬語の乱れ」
「責任回避の表現の濫用」
「表現態度の緩み」を取り上げ、
その変化を時系列的に分析しています。
「第三章 文法論を作り直せ」
ここで一気に難解になります。
学校で取り上げる文法論に
そもそも欠点があるという立場から、
日本語の文法を正しく分析した
研究成果が披露されています。
「第四章 日本語未来図」
日本語の変化を時系列で分析し、
21世紀末に
日本語がどうなっているかを
大胆に予測しています。
その予想は
単なる感覚的なものではなく、
科学的手法による
シミュレーションなのです。
章末には未来の日本語による
未来の日本語論まで載せています。
「(略)ロボットへ歩み寄るのみが
唯一の選択
-唯一なら選択じゃない?
揚げ足とらないでいただきたいと
思うが-とにかく打開の道だとは
限らないだろう。
言語研究者が率先して、
人間向き文法をロボットに効率的に
教育しる方法を開発しる道もある。
どちらにしても、
ロボットとかは我々の
言語集団のメンバーだ!
これって二十世紀までの言語生活と
全く異なる状況だということ、
忘れてはいけないだろう。」
難解な部分を読み飛ばせば、
かなり面白く読めます。
読み飛ばさずにじっくり読めば、
日本語に対する理解は
大きく深まります。
高校生に薦めたい一冊です。
それにしても、
日本語は一体どうなるのでしょう。
(2021.1.25)