でも、実際は凧、「宇宙凧」です。
「宇宙ヨットで太陽系を旅しよう」
(森治)岩波ジュニア新書
「宇宙ヨット」を知っていますか?
名前からすると
宇宙を突き進む帆船です。
つい松本零士の漫画
「キャプテン・ハーロック」の海賊船の
小型版をイメージしてしまいます。
でも、実際は凧、「宇宙凧」です。
打ち上げ後に、宇宙空間で
折りたたまれたセイルを展開し、
1辺14mの正方形に
広がるというものです。
なぜヨットなのか?
それはこの宇宙凧が
太陽風(太陽からの電磁波)を受け、
それを推進力としているからです。
宇宙空間を移動するためには、
当然のことですが、
何らかの推進力が必要です。
「はやぶさ」などは
イオンエンジンによる推進力で
宇宙空間を移動しているのですが、
この宇宙ヨットは
そうした推進剤を使わないところが
特徴です。
本書はこの宇宙ヨット「イカロス」の
開発に携わった著者が、
宇宙開発の魅力について
語ったものです。
第1章 イカロス、深宇宙へ
まずはイカロスの打ち上げから
ミッション遂行までのようすについて
述べられるとともに、
宇宙ヨットの原理について
解説されています。
第2章 イカロス、誕生
イカロスが宇宙に飛び立つまでの
開発段階の苦労について
詳細に説明されています。
日本の宇宙開発の失敗が続いた時期に、
新しいプロジェクトを推し進めることが
いかに困難であったかが
伝わってきます。
第3章 世界で初めて!
4つのミッションの成功
宇宙に何かを打ち上げるためには、
何らかの実験(ミッション)を
行うことが前提となります。
ここではイカロスに与えられた
4つのミッションの
内容と意義について詳説されています。
第4章 宇宙への夢
筆者が宇宙開発にたずさわるまでの
経緯が詳しく記述されています。
宇宙にかかわる仕事を選ぶことは、
決して難しいことではないということが
理解できます。
この章が、子どもたちにとっての
重要なメッセージになると考えます。
第5章
君も宇宙ヨットで太陽系の旅へ!
若い人たちへのエールとなっています。
工学の面白さについて
述べられているのですが、
それだけではなく、
どんな夢でも諦めずに挑戦することの
大切さを、著者は熱く語っています。
今の中学生は羨ましいと思います。
自分の将来を
明るく照らしてくれるような本が
いくつもあるのですから。
以前取り上げた
「ロボット創造学入門」にしても
本書にしても、
若い世代に夢と希望を与えてくれる
素晴らしい本です。
ぜひ中学生に読んでほしいと思います。
めざせ!エンジニア!!
(2021.2.9)