「ロビンソン漂流記」(デフォー)②

名前は誰でも知っているけれどあまり読まれていない本

「ロビンソン漂流記」
(デフォー/吉田健一訳)新潮文庫

無人島に漂着したロビンソンは、
島で生き抜くための
行動を開始する。
居住区域と防護柵の建設、
大麦・米の穀物栽培・パン製造、
野生の山羊の家畜化と
食肉化および酪農・乳製品づくり、
土器製造、
彼の創意工夫は
尽きることなく…。

前回、再読しての感想を記しました。
実は初読(七年前)のさい、
当時登録していたYahoo!ブログに
その所感を投稿していました。
以下はその掲載文となります。

以前から読書が趣味でした。
ところが中学校に勤務していると、
土曜日曜も部活動指導があり、
本を読む暇などなかなか
つくることができませんでした。
自分では人よりも本を読んでいるという
自覚がありましたが、
ある日、気付きました。
「自分は本当は
何も知らないのではないか」と。

名前だけは知っていても、
実際に読んだことのない本の、
その多いこと。
「トム・ソーヤーの冒険」
…わんぱく少年トムが
いろいろやらかす物語だろ…。
「宝島」
…海賊の宝を見つけ出すんだろ…。
「赤毛のアン」
…ほら、昔アニメでやっていた
外国の女の子の物語だろ…、
あっ、それは
「キャンディ・キャンディ」だったっけ?

つけようと思えば
適当に説明がつけられるので、
知っているつもりになっていました。
恥ずかしい限りです。
これで生徒に「本を読め」と
言えるのだろうか。
猛省しました。

そこで数年前から
「名前は誰でも知っているけれど
あまり読まれていない本探し」の旅を
続けています。
「旅」といってもBOOK・OFF巡りと
amazon探検ですが。

この一冊もそうです。
「ロビンソン漂流記」。あれだろ、
ロビンソンさんの乗った船が難破して
無人島に打ち上げられて、
一人で生き抜くという話だろ。
読まなくても十分
知ったかぶりできるのです。

読んでみました。
読んで初めて理解できました。
これは漂流記でなく冒険譚なのだと。

孤島で一人で生き抜くこと以上に、
外敵から身を守ることの方が
大変だったとは
思いも寄りませんでした。
何でもいいから
船が近くを通ってくれれば…、
誰か気付いてくれれば…、
というわけにはいかなかったのです。
現地人(人食い人種!)に見つかれば
食われてしまう。
スペイン船に発見されると
捕虜にされる。
原住民とスペイン人から身を隠しながら
自給自足で生きのび、
そしてイギリス船に
発見してもらうしか助かる方法はない。
こんな過酷な状況だったとは。
しかも島での生活が
28年に及んでいるではないか。
驚きの連続です。

主人公・ロビンソンには
モデルが存在するとはいえ、
物語はあくまでもフィクションです。
何でもありと言えばそれまでですが、
生きることへのエネルギーが
強く感じらる作品です。

「知ってるよ」と言いながら
読んでいない大人のみなさんにこそ、
ぜひ薦めたい一冊です。

(2021.3.4)

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