「残業学」(中原淳)

長時間労働に対するモヤモヤ感を解消する

「残業学」
(中原淳+パーソル総合研究所)
 光文社新書

「働き方改革」が叫ばれてから
何年か経ちました。
皆さんの職場では
長時間労働が解消されたでしょうか。
私は中学校教員をしているのですが、
学校社会では
NOと言わざるを得ません。
長時間労働は
なかなか解消されないのですが、
「なぜ長時間労働は
解消されないのか?」という
モヤモヤ感は、本書を読めば
すぐにでも解消するはずです。
本書は長時間労働の
発生するメカニズムを、
多くのデータから分析し、
懇切丁寧に解説しています。

モヤモヤ感を解消する本書の特質①
長時間労働は個人の責任では
ないということを解き明かしている

私の職場(中学校)でも、
「長時間労働は個々人の仕事の仕方に
無駄が多いのが原因」とされ、
それを見直す方向でしか
「働き方改革」が進展していません。
本書は、長時間労働が発生する原因を、
日本型社会の抱える構造的要因として、
その歴史から始まり、
長時間労働が定着するまでの過程、
様々な業種ごとの現在の状況などを、
豊富なデータを元に解析しています。

長時間労働は、
決して個人の問題などではないのです。
むしろ日本の社会構造にこそ
問題の原因があったのです。
それを理解することにより、
私たちは長時間労働の本質を捉え、
自らの「働き方」と「生き方」に
反映させることができるのです。

モヤモヤ感を解消する本書の特質②
長時間労働は職場・個人双方に
リスクであることを説明している

長時間労働は、
企業にとっては雇用調整に代わる
労働力の調整弁として
機能してきたという
昭和の時代のメリットが、
現代では通用しなくなっているどころか
リスクにさえなっていることに、
筆者は言及しています。
同時に働く側にとっても、
長時間労働が現代では
「豊かな生き方」に直結しないことを
言い当てています。
職場・個人双方にとって
リスクであるならば、
それは解消されるべきであることが、
明快に説明されているのです。

モヤモヤ感を解消する本書の特質③
長時間労働解消後の
未来を提示している

残業がなくなることによって
家計が苦しくなったり、
居場所がなくなったりする事例を
挙げながら、その解決も含め、
長時間労働解消による
「働き方」の在り方について
提言しています。

何のための「働き方改革」か
わからなくなっている職場も
あるかと思います。
そのような中で、
本書はそのゴールとして
「希望の持てる働き方」を
しっかりと位置づけているのです。

個々の職場に照らし合わせたとき、
本書に書かれてある内容が
合致しないケースも
多々あろうかと思います。
また、長時間労働の原因が
個人よりもむしろ企業側にある以上、
労働者サイドからの現状改善には
困難が伴うはずです。
「だから長時間労働解消は無理」と
なりがちでしょうが、
その思考自体が改善を阻んでいることも
本書は指摘しています。
まずは本書をじっくり読んで、
できることからはじめるべきでしょう。

(2021.4.13)

fancycrave1によるPixabayからの画像

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