本書の面白さは「擬人化」にあり
「はたらく細胞01」(清水茜)講談社
酸素を運ぶ「赤血球」の足下で、
突然地面が割れ、
侵入者が現れる。
それは「肺炎球菌」の一団だった。
身の危険にさらされた
「赤血球」を助けたのは
「白血球」だった。
一難が去ったが、
逃げ延びた「肺炎球菌」が
潜伏していることがわかり…。
(第1話 肺炎球菌)
大人気の漫画を、
ようやく入手できました。
Amazonでも近隣のリアル書店でも
しばらく在庫切れ状態が
続いていました。
こんなに人気があったなんて。
自分が世の中の流れに疎いことを、
改めて感じました。
体内に漂着したスギ花粉から
出現した「アレルゲン」は、
次々に細胞を襲う。
危機に遭遇した
「赤血球」を助けたのは、
またしても「白血球」だった。
しかし「記憶細胞」は、
「アレルゲン」出現によって
引き起こされる
壊滅的災害を予見する…。
(第2話 スギ花粉)
本書の面白さは「擬人化」にあります。
体内の細胞たちを、
個性を持ったキャラクターに仕立て、
それぞれの役割を忠実に再現させ、
かつそれを物語として
構成しているのです。
それによって
本来簡単ではない生物学的事項を、
真面目にかつ面白く、
視覚的にわかりやすく伝えることに
成功しているのです。
第2話での終末、
それぞれの細胞が正常に機能した
結果として引き起こされる
「アレルギー反応」の悲惨さを
目の当たりにした白血球の語り
「それぞれが自分の仕事を
全うしただけなのに
こんなことになってしまうとは…
こうなることがわかっていれば…
いやわかっていても…
やるしかなかったが…」は
絶妙です。
謎の細胞ゾンビたちに
襲撃された「ナイーヴT細胞」を
救ったのはやはり「白血球」。
ゾンビたちの正体は
「インフルエンザウイルス」に
感染した正常細胞の
なれの果てだった。
緊急事態に「マクロファージ」や
「キラーT細胞」まで出動し…。
(第3話 インフルエンザ)
実は本書を読みたいと思った理由は、
中学校2年生の理科の単元
「生物のからだのしくみとはたらき」の
参考図書として
活用できればと考えたからです。
これなら十分に活用できます。
子どもたちも喜んで
食いついてくるでしょう。
ただし、第3話以降は、
中学校理科を越えて高校生物学もしくは
大学の医学に関わる領域に
軽々と踏み込んで行っています。
それなのに面白い!難しい内容を
扱っているにもかかわらず、
面白く読めるのです。
第3話の「ナイーヴT細胞」が
「エフェクターT細胞」として
活性化するあたりは抱腹絶倒ものです。
平和な血管内で突如起きた
地面の大陥没。それは
「すり傷」による現象だった。
傷口から侵入する「雑菌」。
「白血球」たちが応戦するが、
次から次へと現れる「雑菌」に、
状況は悪化するばかり。
やがてそれらの親玉
「化膿レンサ球菌」が現れ…。
(第4話 すり傷)
2015年に連載が開始されるやいなや
人気を博し、
複数のスピンオフ作品が
誕生するとともに、
2018年にはアニメ化、
舞台化までされた驚異的な作品です。
作者・清水茜さんは本作がデビュー作。
才能とは恐ろしいものです。
(2021.4.14)
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